原発の関連技術や物資は、核開発に転用される懸念がある。インドは核兵器の保有国だが、核兵器の広がりを世界で協力して阻止しようという核不拡散条約(NPT)に加盟していない。インドに原子力の協力をすると、核拡散につながりかねないとの批判は根強い。

 さらに、日本は原子爆弾を落とされた唯一の国であり、東京電力福島第一原発の事故も経験した。原子力の恐ろしさをよく知る日本が、こんな協定を結んでいいのかと、たくさんの市民や専門家が疑問視している。

 しかも、今回の協定には「インドが核実験をした場合、日本の協力を停止する」という条件が明記されなかった。協定とは別の「見解及び了解に関する公文」という関連文書に盛り込まれた。

 この文書について、日本政府は「インドの原子力の利用を、平和的な目的に限定する法的な力がある」と強調する。だが、インド側は「核開発は、自国の権利だ」という考えを持っているとみられている。(解説/朝日新聞国際報道部・中野寛)

【キーワード:核不拡散条約(NPT)】
1970年、核兵器をこれ以上増やさないことを目的に発効した国際条約。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国にだけ核兵器を持つことを認める一方で、保有国に核軍縮を誠実に交渉する義務を課した。191カ国・地域が加盟しているが、インドやパキスタンなど、核を保有しながら加盟していない国もある。

※月刊ジュニアエラ 2017年2月号より

ジュニアエラ 2017年 02 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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