2016年は日本や世界で、さまざまなニュースや事件があった。昨年一年間を振り返り、どんなことが起きたか確認したい。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、立教大学生涯学習センター講師の早川明夫先生監修の「重大ニュース 2016」から日本の安全保障についてのニュースを紹介しよう。
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日本は周辺諸国と常に良好な関係にあるとはいえない。近隣諸国との領土問題や、基地問題などを見ていこう。
アメリカ(米)でトランプ氏が次期大統領に決まり、今後、日本の安全をどう守っていくのか、改めて問われることになりそうだ。
日本の安全を軍事的に守っているのは自衛隊と米軍だが、トランプ氏は在日米軍にかかる費用を全額、日本が負担しなければ米軍の撤退もありうると発言した。
こういうときこそ、日米関係の基本を確認しておこう。
第2次世界大戦でアメリカなどの連合国軍に敗れた日本は、憲法9条の平和主義のもと、平和国家をめざしてきた。外国から攻められたときだけ自衛隊が戦う。これを専守防衛という。
さらに日米安全保障条約による同盟関係がある。米軍が日本で基地を使う代わりに、日本が攻められたときは米軍が助ける。「盾と矛」といって、自衛隊は守り、米軍が攻める役割分担だ。
そのうえで、安倍政権は特定秘密保護法の制定や、新たな防衛装備移転三原則の決定など、戦後の安全保障政策の大転換を進めてきた。なかまの国が攻撃されたとき一緒に反撃できる集団的自衛権を認め、2015年は憲法違反という強い批判を押し切って安保法を成立させ、自衛隊が海外で武力を使うことに道をひらいた。
ねらいは、自衛隊の役割を増やして日米同盟を強くし、中国や北朝鮮などの動きに対応することだ。自衛隊を外国並みの軍隊にしたい考えもあり、日本の安全保障政策は大きな分かれ道に立っている。
一方で、米軍の普天間基地を同じ沖縄県内の辺野古に移す計画には強い反対があり、政府と沖縄県が対立している。
トランプ氏との関係がどうあれ、幅広い国民の合意がなければ、安定した安全保障政策は成り立たない。まわりの国の信頼を得なければ、いくら軍事力を拡大しても、地域は不安定になる。平和憲法と日米同盟のバランスをはかりながら、対話を通じて問題を解決することが、日本の安全を守ることにつながる。
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