2016年も日本や世界で、さまざまなニュースや事件があった。一年を振り返り、どんなことが起きたか確認したい。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、立教大学生涯学習センター講師の早川明夫先生監修の「重大ニュース 2016」から、国際情勢についてのニュースを紹介しよう。
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2016年の世界はテロにゆれた。
日本人も巻き込まれた。7月にバングラデシュの首都ダッカのレストランを武装集団が襲ったテロでは、日本の開発援助の関係者7人が帰らぬ人となった。
多くの場合で、過激派組織「イスラム国」(IS)が「犯行声明」を出す。
注意しなければならないのは、一部の事件を除けば、必ずしもISが直接、テロの実行を具体的に指示していたわけではないという点だ。
普通に暮らしていた中東系やイスラム教徒の若者などが、家庭内のトラブルや希望する仕事に就けない不満、ヨーロッパ・アメリカ(欧米)社会になじめない孤独感を募らせる。そんなときにネットでISの過激思想に出合い、染まってしまう――。ほとんどが単独での犯行なだけに、監視や取り締まりによる防止が難しい。
シリアやイラクでは、欧米にトルコなど周辺国も加わって、ISへの軍事攻撃を強めている。ISによる過酷な住民迫害と、市民生活を破壊する攻撃の双方から逃れようと、大勢の難民が16年もヨーロッパをめざした。
だが、「テロリストが紛れ込んでいるかもしれない」との恐怖心から、ヨーロッパは一転して難民受け入れに消極的になった。ハンガリーは難民や移民の流入を防ぐため、国境にフェンスを築いた。比較的、寛容だったドイツでも、反移民を掲げる政党がメルケル首相の与党を脅かす。
EUからの離脱是非をめぐるイギリスの国民投票でも、離脱派は難民や移民の写真を使って人びとの不安をあおった。
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