台湾の鴻海精密工業が、日本の大手電機メーカー、シャープの買収を決めてからはや2カ月が過ぎた。
小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』では、毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている。なぜ、この買収劇が起こったのか。本誌に掲載された解説を紹介しよう。
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大手電機メーカーのシャープが、台湾の巨大企業の鴻海精密工業に、会社ごと買い取られることが決まった。東芝などほかの大手の事業も、海外の企業に買われる動きが続く。日本の経済を支えてきた電機産業が、世界的に見ると弱くなったことを示している。
シャープは1912年にできた歴史ある会社だ。創業者の早川徳次氏が発明した筆記用具のシャープペンシルが社名の由来になっている。「アクオス」というテレビが大ヒットして、世界的にも有名だった。
テレビやスマートフォンの画面になる「液晶パネル」をつくるため、大阪府や三重県に大きな工場を建てたが、これが失敗だった。韓国や中国の企業が安いものをどんどんつくるようになり、シャープの液晶パネルは思ったように売れなくなった。工場を建てるのにお金をかけすぎたこともあって、自力で借金を返すのも大変になってしまった。そこで会社を立て直すためにお金を出してくれる企業を探したところ、鴻海が応じることになった。
鴻海はたくさん工場を持っていて、世界の有名な企業から頼まれて製品をつくっている。例えばソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション4」や、アメリカ・アップル社のスマートフォン「iPhone」がある。売上高は約15兆円強とシャープの5倍以上もあるが、他社のためにモノをつくる企業なので、日本ではあまり名前は知られていなかった。
鴻海は3888億円を支払うことでシャープを自分のものにする契約を4月2日に結んだ。よく知られたシャープというブランドや高い技術力を、活用することがねらいだ。
日本の大手メーカーは、洗濯機や冷蔵庫、テレビなどの家電をたくさんつくって輸出し、利益を出していた。だが最近、より安くつくる競争で、韓国や中国のメーカーに負けることが増えている。iPhoneのような新しいヒット商品もうまく開発できていない。
東芝は3月に家電事業を中国の美的集団に売ることを決めた。海外の企業に買われるメーカーは、これからも出てきそうだ。
(解説・新宅あゆみ/朝日新聞経済部)
※月刊ジュニアエラ 2016年6月号より