甘利さんはこうした法律に違反したおそれがあり、大臣辞任だけではすまないかもしれないんだ。
■元総理が逮捕されたことも
かつて、日本の政界では、びっくりするような汚職事件が相次いだ。1976年のロッキード事件では、故・田中角栄氏が総理大臣のとき、5億円をもらってアメリカのロッキード社の飛行機を全日本空輸に買わせたとして逮捕された。
田中氏は「みなさんがどこから耕運機を買おうと総理大臣には関係がありません。同じように飛行機も総理大臣と関係ありません」と無実を言い張ったけれど、裁判所は賄賂を受け取った罪で懲役4年の判決を下した。
88年に発覚したリクルート事件は、値上がり確実のリクルートコスモス(現:コスモスイニシア)の未公開株を、親会社のリクルートが主導して政治家たちにばらまき、大もうけさせた。それがばれて失脚した政治家は「毒まんじゅうを食べちゃった」と悔しがった。
90年代に力を振るった故・金丸信自民党副総裁は、東京佐川急便からの5億円のヤミ献金(無届けの献金)が明るみに出て罰金20万円を払った。「罪が軽すぎる」と批判が湧き出して、捜査を担当した東京地方検察庁の看板にペンキをぶちまける市民も出た。東京地検は発奮して金丸氏を逮捕して調べ直したら、金丸事務所の金庫から、なんと金の延べ棒が見つかった。
こんな私利私欲の政治はやめようと、最近は「政治資金パーティー」を開き、そのパーティー券の売り上げを政治資金に充てる集め方がはやっている。しかし、これだって、政治家と業者の間に秘密の打ち合わせがあれば、いくらでも賄賂の代わりになる。
政治献金にも同じことがいえるので、「届ければ問題ない」という今の制度にも問題が残る。このため、野党からは、企業や団体からの政治献金を全面禁止して、腐敗の根を断つという提案も出されている。同じことを繰り返さないために、覚悟を決めて制度を見直す必要があるのではないか。
(解説・早野透/桜美林大学教授・元朝日新聞コラムニスト)
※月刊ジュニアエラ 2016年4月号より

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