京大出身初のプロ野球選手となる田中英祐さんは、1992年兵庫生まれ。現役で京大工学部に進学後、関西学生野球リーグで活躍し、京大史上最多の通算8勝を挙げた。2014年のドラフト会議でロッテから2位指名を受け、プロ入りを決断。来シーズンからの活躍が注目される田中さんに、これまでどのようにして野球と勉強を両立させたのかをお話してもらいました。
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2014年のプロ野球のドラフトで千葉ロッテマリーンズから2位指名され、京大初のプロ野球選手となる田中英祐さん。小学校時代から地域の少年野球チームに所属し、お父さんがそのチームのコーチを務めていました。
お母さんの勧めで中学受験し、出身地・兵庫県の私立白陵中学・高校に進学しています。
「中学受験のために小学5年から塾通いするのですが、塾の面談で『野球と受験勉強の両立は無理』と言われ、平日は野球の練習はあきらめざるをえませんでした」
それでも土日の練習や試合には出続け、6年生の夏までは野球から離れることはありませんでした。
白陵は東大・京大を始めとする難関大学の合格者を多く輩出している名門進学校ですが、田中さんは中高でも30~40番台の成績をキープしながら野球に打ち込みます。その文武両道を可能にしたのは、やはりすきま時間の有効活用。
「高校の頃は練習がきつくて、家で勉強していても眠気に襲われることがよくあるので、学校の休み時間に宿題をできるだけやるようにしていました」
そんな頑張りは、部活で鍛えられた集中力が支えていたようです。高2の秋頃になると、部活をせず受験勉強に邁進していた同級生が〝息切れ〟を見せる一方で、田中さんは時間を見つけては集中的に勉強することを心がけ、成績も徐々に追いつくようになりました。
そして、京大に見事、現役合格。実験も多い工学部でしたが、ここでも田中さんはすきま時間をできるだけ有効活用します。
「実験は、長いときは午後ずっと続くようなこともありましたが、それでも、できるだけ早く終わらせるようにして、ランニングだけでもいいからと、毎日少しでも練習に参加するようにしました」
毎日少しでもいいから練習をコツコツと積み重ねる。この持続力・継続力は、小さい頃から勉強で培ってきた“基礎体力”があったおかげだと田中さんは言います。
「小学生時代に、母から『これ、やっとき』と渡されたドリルを毎日淡々とやっていたのを覚えています。それが先取り学習にもなっていて、学校の授業も聞いていて楽しかったですね」
部活で身につけた力が勉強に好影響を及ぼすこともあれば、勉強での教訓が部活に活かされることもある。文武両道には、その両方の側面があるようです。
『AERA with Kids2014冬号』より