そこで、投稿者を突き止めやすくしたり、罰則を強化したりする動きを政府が加速させている。被害者を救うためにはいいことだ。でも、課題もある。
一つは、悪質な誹謗中傷をした人すべてに罰を与えるのが難しいこと。数が多いので悪質性が高く、特定しやすい人を選んで訴訟せざるを得ない。
もう一つは、罰則を強化すると「表現の自由」を狭めかねないことだ。たとえばドイツでは、違法な偽ニュースやヘイトスピーチを通報から24時間以内に削除できなかった場合、1件につき最大5千万ユーロ(約60億円)の罰金をSNSの運営会社に科す法律ができたが、その結果、運営会社が投稿を過剰に削除するようになってしまった。現在、削除基準を第三者委員会が決め、それに従って会社が運用する方法が検討されている。
もし、きみが誹謗中傷の対象にされたら、自衛のためにスクリーンショットとURLを残すことが大事。被害を証明するには証拠が必要だ。そして信頼できる大人に相談しよう。
木村さんの件でも問題になったことだが、テレビを見るときは、現実と作り話の区別をつけることも重要だ。憎しみの感情をたかぶらせて、みんなで盛り上がるタイプの番組などでは、ノリで自覚のないままひどい投稿をしかねないので注意しよう。自分がされていやなことは、リアルな世界でもネットでも、他人にしてはいけない。ネットの書き込みは、その人に直接話しかけるのと同じように、想像力を働かせながら行おう。(メディア・アクティビスト 津田大介)
※月刊ジュニアエラ 2020年8月号より
ジュニアエラ 2020年 08 月号 [雑誌]
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