首都圏の私立小学校の「お受験」まで2カ月を切った。近年のペーパーテストは、子どもの「考える力」や「聞く力」が問われるという。5歳、6歳児にどんな問題が出題されるのか。現在発売中の『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2021」』では、大手幼児教室「こぐま会」代表の久野泰可さんを取材。有名小学校の過去問を解説してもらった。


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私立小学校が入試問題を公表することはない。市販の問題集はすべて、受験した子どもや保護者から入試内容を聞き取り、幼児教室が再現したものだ。
本番では、問題文は問題用紙に書かれておらず、試験官の先生が読み上げ、〇や×といった記号で解答していく。 文字の「読み書き」ができなくても解けるが、問題文が読み上げられるのは、一度だけ。集中して話を聞かなければならない。
まず、難関私立大学にエスカレーターで進学できる人気共学校の2020年度入試で出題された「数の増減とやりとり」の問題(図1)をみてみよう。
【問】 数の増減とやりとり
クマとイヌとパンダが持っているリンゴの半分の数を、同時に矢印の方にいる動物にあげます。2回同時に、矢印の方にいる動物にリンゴをあげたとき、パンダのリンゴの数はいくつになりますか。下のお部屋に〇をつけてください。
リンゴがどうしたって? 「お部屋」ってどこだっけ? 問題文を聞き終えると、記者の頭の中は真っ白に。繰り返すが、問題文は読み上げられるだけなのだ。試験会場という慣れない場所で、緊張の中、問題を正しく理解し、解答までたどり着くのは大人でも難しい。
この問題について、久野さんはこう解説する。
「2者間で物をやりとりする問題は、よく出題されますが、これはパンダ、クマ、イヌと動物が3匹いるため難易度もアップ。『持っているリンゴを隣の動物に半分あげて、別の動物から半分もらう』という作業を2回繰り返さなければいけません。この問題で問われるのは、論理的な思考力の基礎となる『複数の視点を持つこと』。2回のやりとりで数がどう増減するのか、順を追って考えていく必要があります。物事を系統立てて考える『プログラミング的思考』が鍛えられる良問といえるでしょう」
この問題の答えは、5個の〇、となる。
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