7年8カ月という長期にわたって国政を仕切った第2次安倍政権が、2020年9月に終わった。代わって首相に就いたのは、安倍晋三氏を官房長官として支えた菅義偉氏だ。菅首相は安倍政権の継承を掲げており、さまざまな課題も引き継がれる。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」11月号では、安倍長期政権を振り返り、21年10月までに行われる次の衆議院議員選挙について考えた。

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 明治以来、最も長い7年8カ月余り在任した安倍晋三首相(当時)が20年9月に退陣した。「1強」とも言われた政権は政治に一定の安定をもたらした一方、長期化するにつれ「政権の私物化」といった批判も招いた。

 8月28日夕方、安倍氏は首相官邸での記者会見で、持病の悪化を理由に辞任することを表明した。自らの成果を問われると、雇用の場を作り出したこと、アメリカとの関係強化、TPP(環太平洋経済連携協定)など、ほかの国との貿易がさかんになるようなしくみを作ったことなどを挙げた。「選挙のたびに力強い信任を与えてくれた国民のおかげだ」と語った。

 自民、公明両党の与党は2013年の参議院議員選挙(参院選)以降、衆議院議員選挙(衆院選)と参院選で勝ち続け、国会で過半数を大きく上回る議席数を維持した。その勢力を背景に、政権はさまざまなルールの作成や変更を進めた。

 特に力を入れたのは経済だ。この間、企業の株価は上がって、失業率は下がり、最低賃金は引き上げられた。

 ただ、野党の評価は厳しい。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、辞任会見の2日後にBSの番組で「無理をして従来のやり方で現状を維持しようとし、いろいろとひずみが出た」と話した。その一つが格差の問題だ。雇用される人の数が増えても、非正規社員は増加し続け、その割合は4割近くにまで上昇。物価の変動を考慮した「実質賃金」の伸びも限定的だった。枝野氏は「貧困が生まれ、経済の足を引っ張った」と言う。

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内田晃
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