安倍氏の辞任表明会見では、森友学園の問題などを引き合いに「政権の私物化という批判をどう考えるか」との質問も飛んだ。安倍氏は「説明ぶりについて反省すべき点もあるかもしれないが、私物化したことはない」と反論した。だが、共産党の小池晃書記局長は「誰が見たって私物化が続いた」と話す。実際、安倍政権では政治が公平・公正に行われているのか、疑問を抱かせるような問題が相次いだ。

 たとえば、安倍氏の妻が名誉校長を務めていた森友学園をめぐる問題だ。

 国は16年に学園側に国有地を8億円余り値引きして売却した。なぜ、値引きされたのか。国会でこの問題を追及された安倍氏は「私や妻が関係していれば、首相も国会議員も辞める」と言い放った(17年)。その発言の直後から、財務省は密かに売却の経緯などを記した公文書の改ざんを始めた。文書は、事実関係をただすために国会が財務省に提出を求めたもので、18年になって改ざんがわかった。

 安倍氏の友人が理事長を務める加計学園による獣医学部の新設問題をめぐっては、「総理のご意向」だとする内閣府の内部文書の存在が発覚した(17年)。首相が主催する公的行事「桜を見る会」に、安倍氏の地元事務所が後援会関係者に幅広く参加を募っていたことも明るみに出た(19年)。

 いずれも根っこにあるのは、安倍氏に連なる人物が特別扱いをされたのではないかという疑念だ。野党は国会で事実関係を明らかにするよう要求。関係者の招致や資料の提出などを求めたが、与党は後ろ向きで、問題はたなざらしにされた。

 安倍内閣では、歴代内閣の憲法解釈を飛び越えて集団的自衛権の行使容認を閣議決定するなど(14年)、議論を尽くさず国のあり方を変える強硬姿勢が目立った。国会でも、政府・与党は世論の賛否が割れる法案を、さまざまな疑問が解消されないまま次々と成立させた。特定秘密保護法(13年)、安全保障関連法(15年)、「共謀罪」法(17年)……。繰り返された採決の強行に、野党からは「民主主義の土台が壊されてきた」(小池氏)との批判が渦巻く。

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