■芸術系生徒は認められて成長し、力を発揮する

 美術科教諭の德山高志先生は、課外授業についてこんな話をしてくれた。

「課外授業は絵を描くのが好きだからという動機で受講し始める生徒がほとんどです。が、彼女たちの成長過程において、社会的な問題に目を向けるようになる中でデザインに関心を抱き始めるとか、芸術のさまざまな分野を深く学んでいこうという姿勢が生まれてきます」

「うわあ! 德ちゃん!? 懐かしい!」

 德山先生の取材模様の話をわたしから聞き、こう嬉しそうに声をあげたのは、同校出身で現在はイラストレーターとして活躍する平井さくらさん(34歳)だ(平井さんのwebサイトはこちらhttp://on-line.sakura.ne.jp/)。

 平井さんは学校生活をこう振り返る。

「吉祥では本当にいろいろな分野をじっくり学べました。デッサンに陶芸、段ボールアート、油絵など……。さまざまな世界をのぞくことで、絵画の見方が変化したのを覚えています」

 平井さんには德山先生との忘れられない思い出があるという。

「吉祥祭(文化祭)のポスターを作る係になったとき、私を含めた5人の案から一つが選ばれることになりました。わたしは自信がなかったのですが、なんと德山先生はわたしの案を選んでくれて、『平井はセンスがいいな』なんて言ってくれて(笑)。結果的にはほかの子の案が選ばれたのですが、あのときは自分を認めてくれたように感じて、嬉しかったです」

 芸術系の生徒たちは、どこかで自分を認められる場面を経験して、成長していくようだ。

 また、芸術系には「面白い性格の生徒が多い」という。広報部副部長で家庭科教諭の山根晶子先生はこんな話を教えてくれた。

「芸術に打ち込んでいる生徒たちはそれぞれの視点や切り口、発想が独特ですよね。文系や理系の生徒は、それをどこかリスペクトする空気があります。教員の目線から見ても、たとえば講演会が開催され、その感想文を書かせると本当に面白いものが多い。ほかの生徒たちも『ええ!? あの子、こんな鋭いことを考えていたの!?』なんてびっくりすることがよくあります。行事等においては、芸術系の生徒たちはここぞという場面で頼りにされています」

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