文部科学省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2020年10月23日、21年の秋にも新たな宇宙飛行士を募集すると発表した。今回募集するのは数人で、選ばれた飛行士はアメリカが主導する月探査計画に参加して実際に月に行ける可能性もあるという。募集の背景にある近未来の月探査計画についても見ていこう!小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」1月号の記事を紹介する。

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 地上約400キロメートル上空の軌道上を周回する国際宇宙ステーション(ISS)を主な舞台に、日本人宇宙飛行士が活躍している。2020年11月16日(日本時間)には野口聡一飛行士がスペースX社の開発した新型宇宙船「クルードラゴン」に搭乗し、3度目の宇宙に飛び立ったばかり。野口飛行士はISSに約半年間滞在する予定だ。

 これまでにJAXAの日本人宇宙飛行士は計11人誕生している。1992年にスペースシャトルで宇宙へ行った毛利衛さん(現日本科学未来館館長)を皮切りに、前回2008年の募集では油井亀美也さん、大西卓哉さん、金井宣茂さんが選ばれた。

 今回の募集の背景には、二つの理由がある。一つは7人いる現役の飛行士の平均年齢が51歳と高くなっていて、若い飛行士が求められていること。もう一つは、アメリカが主導する国際的な月探査プロジェクト「アルテミス計画」への日本の参画が20年7月に正式決定したことだ。この決定により、早ければ今後10年以内の日本人飛行士の月面への着陸が現実味を帯びてきている。宇宙飛行士の若田光一さんも、JAXAのホームページでこうコメントしている。「多くのみなさんが月探査でも活躍できる宇宙飛行士を目指して応募してくださることを期待しています」

 宇宙飛行士の新たな募集は単発で終わらず、今後も5年に1度程度のペースで行っていくそうだ。

●2024年に有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」

 人間が月面に着陸するのは、アルテミス計画が最初ではない。アメリカは1961年に月に人を送り込む「アポロ計画」をスタートさせ、宇宙船アポロ11号に搭乗した2人の飛行士が69年7月20日(協定世界時)に人類で初めて月面に降り立った。彼らは再び月面から離陸して地球に帰還し、世界中でその偉業がたたえられた。その後、アポロ11号に続く12・14・15・16・17号が月面着陸を成功させて計6回、12人が月に行って帰ってきたことになる。6回の月面着陸によって、アメリカは世界に卓越した宇宙開発技術を示すことができただけでなく、月の科学的な調査・研究も大きく進んだ。ところが有人月面探査は72年のアポロ17号を最後に途絶えてしまう。以後の月や惑星の探査は無人探査機や望遠鏡だけで行われるようになった。

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上浪春海
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