「進化」というと、恐竜が鳥に進化したとか、サルがヒトに進化したという、大昔に起きたことを思い浮かべるかもしれない。でも、雑草のような身近な生き物にも、今起こっている進化が見られることがあるという。どんな進化なのだろうか? 小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」3月号の記事をお届けする。

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 春が近づき、暖かい地方では日当たりのよいところに草が生え始めるころだ。今回の主役は、そんな草の一種、メヒシバだ。メヒシバは乾燥に強く、栄養分の少ない土地でも育つ、しぶとい雑草だ。全国に分布し、農村や郊外だけでなく、東京の丸の内のような都会のど真ん中にも生えている。

 東京大学大学院の深野祐也助教は、同じメヒシバでも生えている環境によって草の姿に違いがあることに気づき、東京周辺の各地を歩いて調べてみた。その結果、都会のメヒシバは、茎を横に伸ばして地面をはうように育つもの(匍匐型)が多いことがわかった。一方、畑など農地に生えるメヒシバは、真っすぐに立って上に伸びるように育つもの(直立型)が多かった。

 都会のメヒシバは踏みつけられることが多いから上に伸びず、地面をはうように育つものが多いのだろうか? それとも、もっと別の理由があるのだろうか?

●姿の違いは進化の結果!?

 くわしく調べるために、深野さんは関東近辺の都市や農地の計13カ所からメヒシバの種子を取ってきて、ビニールハウス内の同じ条件のもとで育ててみた。すると、同じ条件で栽培しても、都会のメヒシバには匍匐型が多く、農地のメヒシバには直立型が多かった。都会のメヒシバがはうように育つのは踏まれたせいではなく、農地とは違う環境の中で世代交代するうちに進化したことを示す結果だった。

 農地は土がフカフカで水分も栄養分も多く、植物が育つには理想的な環境といえる。ただし、多くの種子が発芽するので、生きのびるための競争は激しい。これに対して都会の市街地はコンクリートやアスファルトに覆われ、水分も栄養分も乏しい。それだけに発芽しにくいが、競争相手は少ない。農地と都会の市街地、どちらも人がつくりだした特殊な環境だ。

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上浪春海
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