2歳の息子にレトルトの幼児食ばかり与える妻。夫は、仕事が忙しく子育てに時間をかけられないものの、妻のレトルト食に不満を募らせています。ただ、妻に不満を言いづらいという悩みももっています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。



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【相談者:2歳の息子を持つ40代の父親】
 2歳2カ月の息子を持つ40代の父親です。妻の育児に不満があります。妻には、子どもに幼少期から十分な愛情を注いでもらいたく、妊娠を機に専業主婦になってもらいました。しかし先日、台所に大量のレトルトの幼児食がストックされているのを見つけました。聞くと、「朝と昼はいつもぶっかけご飯にしているため、まとめ買いした」とのこと。私が仕事で家にいない間、息子がレトルトの味に慣れてしまい、「レトルト以外のものを食べなくなるのでは」「将来、インスタントラーメンばかり与えるのでは」と心配です。ただ、自分は子育てに時間をかけられるわけではないので、不満を口にしづらいです。さらに話し合いをしようとしても妻は「自分は大変」と主張するだけで全く解決に至りません。どうしたら妻への不満を解消できるでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】
・「唐棣(とうてい)の華(はな)、偏(へん)として其(そ)れ反(はん)せり。豈(あ)に爾(なんじ)を思わざらんや、室(しつ)の是(こ)れ遠ければなり。子曰わく、未(いま)だ之(こ)れを思わざるなり。夫(そ)れ何の遠きことか之れ有らん」(子罕第九)

・「参(しん)よ、吾が道は一以って之れを貫く」
「夫子(ふうし)の道は忠恕(ちゅうじょ)のみ」(里仁第四)

【現代語訳】
・「『ニワザクラの花が、美しくひらひらと揺れている。あなたを恋しいと思うのだけど、なにぶんあなたのお住まいが遠すぎて――』。先生はおっしゃった。遠いと思うのは、相手の女性を心の底から思ってはいないから。本当に会いたいと思うのであれば、家の遠さぐらいはふっとぶ。なんの遠いことがあるものか」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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