教育系YouTuber葉一さんの無料で学べる授業動画が人気だ。コロナ禍で自宅学習の重要度が増すなか、教育に改革を起こしている。AERA2021年6月28日号の記事を紹介する。

葉一さんの授業動画から。動画で扱った問題は公式サイト「19ch(塾チャンネル)※」からダウンロードできる
葉一さんの授業動画から。動画で扱った問題は公式サイト「19ch(塾チャンネル)※」からダウンロードできる

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 学校でも塾でもなく、勉強を学ぶことができる「第三の場所」として、子どもたちの人気を集めているのが教育系のYouTubeチャンネルだ。

 このジャンルの先駆者といわれる教育系YouTuberが葉一(はいち)さん。配信する授業動画「とある男が授業をしてみた」は、2012年に配信を開始し、もうすぐ10年になる。わかりやすいと中高生を中心に口コミで広がり、いまではチャンネル登録者数は約147万人、動画の累計再生回数は4億回を突破する。

 動画授業を始めたのは、3年ほどやった塾講師がきっかけ。

■つまずきを全て支える

「生活を切り詰めて塾に通っていたり、夏期講習は通えなかったりする生徒が思った以上にいました。親の所得格差で子どもたちの学びの選択肢を狭めていることに、僕はどうしても納得できませんでした。学びたい子が無料で勉強できる場所をつくれないかと塾を退社し、たどりついたのがYouTubeです」

 葉一さんが教えるのは小学3年生からの算数と中学生の国語、英語、数学、理科、社会、そして高校生の数学だ。動画は1回15分程度で、投稿頻度は3日に一度ほど。小、中、高校生向けにそれぞれ教え方を変え、赤青黒の3色で書かれたホワイトボードを使用しながら、解説とともに答え合わせをしていく。

 この動画の最大の特徴は、すべて教科書に沿って作られていることだ。現在3600本ほどの動画がアップされていて、1回の動画をつくるのに3、4時間ほどかかるという。とてつもない作業時間を費やしてきた。なぜ教科書をまるまる一冊解説することにこだわったのか。

「子どもたちがどこでつまずくかは、本当にバラバラ。だからこそ、どこでつまずいても絶対に支えられる、動画を見た子どもたちに疑問を残さないコンテンツをつくりたかったんです。基本的には学校や塾の予習や復習のサポートに活用してもらえるようにしています」

 葉一さんの授業動画の視聴者である女子中学生はこう話す。

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橋爪玲子
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