■子どもと親とで志望校が異なる場合は?
12歳の子どもに大人と同じ判断力はないため、志望校選びは親主導が基本だ。
「校庭が広い、上級生が優しい、というのは志望校への憧れの材料にはなっても、決め手にはできない。6年間の環境を選ぶのは親が主体であるべきです」(齊藤さん)
ただ、ここで気をつけたいのが親の希望を「押し付け」にしないことだ。
「多感な時期の中高6年間で学校に対する不満が出たとき、『親に行けと言われた学校』だという意識を持っていると、問題を乗り越えることができなくなってしまいます。実際には保護者の意向であっても、あたかも子どもが自分の意思で決めたかのように導くこと。そこは親の冷静な作戦で誘導を」(三谷さん)
■結局のところ、「わが子に合った学校」って?
合格通知は「ぜひうちに来てください」という、学校からの意思表示だ。子どもの努力を評価し、認めてくれたということであり、そこには「縁」というものも感じる、と東さんは言う。
「実際に通ってみたら予想以上にいい学校で、とても充実した学校生活を送ることができた、というケースはたくさん見ています」
偏差値や学校の序列は流動的なもので、学校の絶対的な評価を示すものではない。
「偏差値に振り回されずフラットな気持ちで学校を見て、そこに溶け込むわが子の姿を想像できたのなら、選択肢に入れるべきではないでしょうか」(東さん)
(文=深津チヅ子、岡田慶子<編集部>)
【話を聞いた人】
矢野耕平/中学受験指導「スタジオキャンパス」代表。27年にわたり中学受験指導を行う。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)ほか。
kanaharu/2019年に息子が、21年に娘が中学受験を経験。その経験とノウハウを伝承するサイト「僕らの戦略受験–超中流の逆襲–」を運営。
齊藤美琴/家庭教師、学習コーチ。SAPIXの個別指導部門・プリバート東京教室を経て独立。国語の指導ときめ細かい学習コーチングに定評がある。自身も中学受験を経験。
東広樹/早稲田アカデミー教務本部中学受験部次長。ExiVたまプラーザ校校長を経て2021年度から現職。志望校別対策コース「NN開成クラス」の副責任者も務め、多くの難関中学志望者を合格に導いている。
声の教育社 後藤和浩、三谷潤一/首都圏中学・高校の過去問題集を発行する声の教育社。過去問出版社ならではの情報をYouTube「声教チャンネル」で発信している。
朝日新聞出版