◇「保護者・教育者として」
川崎裕さんの母・美智子さんインタビュー
■バイリンガルをめざすなら手作り教育を
娘をインターで学ばせたいと思ったのは、英語を身につけさせたいというよりも、インターの教育の自由さ、そして子どもたちが人を肯定的に見ているところにひかれたからです。
インターでは、教育上、他人と比較して競争をさせません。やらなかったことに対しては怒られますが、やったことに対しては、たとえ失敗しても必ずほめてくれます。ちょっとでも良いところがあると、それを拾って評価してくれる。そういう環境だからこそ、「自分は自分」という強い姿勢が生まれたんだと思いますね。娘の京大受験に付き添った際、昼休みに本人が「もうダメだ」と弱音を吐いたので、「京都見物でもして帰ろう」と言ったのですが、休憩が終わるころには「他人は他人。最後までやる」と気持ちを切り替えて、試験会場へと戻って行きました。こうした強さは親としては大変ありがたいと思っています。
一方で、教育者としては日本語力の点で注意が必要だと感じています。英語と日本語では構造も違いますし、言語に付随する文化も異なります。インターにも日本語の授業はありますが、「使わない・使えない」日本語が出てくるんですね。例えば、「一、二、三」を「いち、に、さん」と音読みできても、「ひとつ、ふたつ、みっつ」という訓読みは知らない。そうなると、「二日、三日」も「ふつか、みっか」とは読めないんです。ですから、家庭で日本語学習をフォローする際は、「母国語」として意識的に取り組む必要があります。
子どもの教育は、一度進路を決めたら簡単には引き返せないものです。バイリンガルをめざすならどこかの家庭のまねや情報に振り回されるのではなく、一から教育を手作りするつもりで、自分たちの家庭の教育方針をしっかりと考えて決めていくことが大事だと思います。
川崎美智子(かわさき・みちこ)
エプシロン代表。2007年に理科・算数を通して英語を学ぶマリースクールを開校。現在、学校や塾、個人への英語教育コンサルタントも務める。
(文/岩本恵美)
※『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2022」』から抜粋
朝日新聞出版