27年にわたり中学受験指導を行っているベテラン塾講師・矢野耕平さんが、実際にかかわった受験生の実例や、自身で足を運んで取材した私立中高の様子をもとに、中学受験や学校選びのヒントをつづります。受験するなら知っておきたい、私立中学と中学受験の「リアル」とは――。
【図表】私立中高6年間でかかる教育費、公立の何倍?* * *
■わが子を置いて残していきたくなる街
2022年4月。新たな共学の中高一貫校が誕生する。
石川県金沢市。かつてこの地は「北陸の小京都」と呼ばれていた。古くから残る建物や街並み、和菓子の店や茶屋街、数々の伝統工芸品、地の野菜、あるいは、日本三名園のひとつである兼六園をはじめとした観光名所など……。確かに京都と共通項の多い土地柄であるように感じられる。
しかし、金沢の人々は「小京都」と言われることに違和感を抱くようだ。
「『加賀百万石』という有名なことばがありますが、公家文化を中心に栄えた京都に対して、金沢は最大の外様といわれた前田利家が築いた、いわゆる武家文化で発展した街です。加賀藩は武士のみならず、庶民を対象に学問や文芸にも力を入れました。その影響でしょうか。人口10万人当たりの大学数では石川県は京都府に次いで全国第2位です。『学都・金沢』とも呼ばれているのですよ」
こう説明してくれたのは学校法人金沢学院大学・企画部部長補佐の西念佑馬先生。
この西念先生の名刺を見ると、その所属先に「中学校設置準備室」と添えられている。
学校法人金沢学院大学は現在、「大学」「短期大学」「附属高校」を有しているが、来春2022年度に中学校を新規開校する。前身の私立金沢女子専門学園が1946年に創立されてから75年経ったいま、なぜ中学校を開設するのだろうか。聞くところによると、来年1月には東京・名古屋・大阪でも中学入試を実施し、広範囲から入学生を集めたいという。それを見越して、寮制度を充実させるらしい。
そういえば、東京から金沢に赴任した教育関係者が次のような発言をしたことをふと思い出した。
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