息子が友人宅を出入り禁止に。「ぼくはやっていない」というわが子を信じたい母親が解決に動くのはやりすぎか。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、『論語』から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の母親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:8歳の息子を持つ30代の母親】

 小学2年生の息子を持つ30代の母親です。息子は最近、いつも放課後遊びに行っていた友達A君の家に行っても、断られて帰ってくるようになりました。どうやら息子はA君の家でおもちゃを壊したり、庭の花を引っこ抜いたりと暴れたらしく、別の同級生のママ友から「(息子が)A君の家を出入り禁止になっている」と聞きました。息子に聞くと「絶対やってない」と言います。真実なら謝らせ、出入り禁止を解いてもらうよう、私からA君の親へ話をしに行きたいと思うのですが、夫に相談すると「子ども同士のことに、親がそこまで介入する必要はない」と否定的です。どちらが正しいでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子曰(い)わく、人、遠き慮(おも)んぱかり無ければ、必ず近き憂(うれ)い有り」(衛霊公第十五)

・「子貢(しこう)、友を問う。子曰わく、忠もて告げて善もて之(こ)れを道(みちび)く。不可なれば則(すなわ)ち止む。自(み)ずから辱(は)ずかしめらるること無かれ」(顔淵第十二)

【現代語訳】

・「孔子はおっしゃった。人がもし、目の前の身の回りの問題を重大なことだと考えず、遠く将来のことに対して熟慮を欠けば、必ず足元から災いが起こるに違いない」

・「子貢が友情について尋ねた。孔子はお答えになった。まごころを尽くして、過ちがあればそれを教えて良いほうへ導いてあげること。もしうまくいかない場合は、付き合いをやめて相手の様子を見守りなさい。あまりしつこくして、自分から嫌な思いをすることのないように」

【解説】

 お答えします。友達の家で出入り禁止になっていると、同級生のママ友から聞かされるなんて、相談者さんのショック、まずお察しします。それと同時に、直接A君の母親が、息子さんのいたずらを相談者さんに教えてくださればいいのに、と思ってしまいます。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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