「第1志望とされる学校が多い2月1日午前に実施される入試の合格率は約3割にすぎません。21年度入試では、残り7割の受験生が途中であきらめることなく、最後まで受け続けた。何がなんでも私立に行きたいという意思の表れでしょう」(森上さん)
もっとも安田さんは「コロナ禍以前から私学への傾斜は始まっていた」と、次のように分析する。
「ここ2年の増加傾向はコロナ禍で顕在化した公私の教育内容の差が理由でしょうが、それ以前から受験生は微増していた。大学入試改革がゆれ動いて不安が募り、保護者や受験生は『私学のほうが入試改革に、より敏速に対応してくれる』という期待があったのでは。大学付属校人気も、それが要因のひとつでしょう。また、社会のグローバル化、デジタル化が急速に進んでいますが、英語、ICT(情報通信技術)教育は私学のほうが進んでいます」
■家計的に私立へのハードルが下がった
森上さんは、「家計の面でも私立へのハードルが下がった」と分析する。夫婦共働き世帯は1990年代に専業主婦世帯を上回り、今では2倍以上の差になっている。
「中高で私学に進学するためには、年収800万円以上が必要と言われていますが、給与自体は上がらなくても、2人が働くことで2倍になる。さらに2020年からは私立高校向けの就学支援金制度の額が増加し、実質無料となるケースも。家計的に中学3年間だけ乗り切ればなんとかなるという意識で私立中学を志望する家庭も増えているのでは」
ただ、受験生の増え方には偏りがある。森上教育研究所の調べによると、偏差値帯(四谷大塚の場合)を〔A65以上、B64~60、C59~55、D54~50、E49~45、F44~40、G40未満、H非エントリー〕と分類した場合、Eより下の中堅校以下での増加が著しいという。
「通常、中学受験する際は小学3年の2月に入塾し3年間勉強しますが、昨年のコロナ禍での私立中の対応を見て、5年次に塾に駆け込んだ生徒もいたのでは。2年間の準備では上位・難関校には届かないため、中堅以下の学校の志望者が増えているのでしょう」(森上さん)
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