安浪:なるほど。でもその対話って、勉強しないことにイライラしているお母さんだと難しいかもしれないから、たまにはお父さんと息子でじっくり話してみるとか。可能なら第三者の大人と話せるといいですけど。

矢萩:そうですね。その時に僕が強調するのが、「自分で判断できるタイミングになった時に、選ぶことができるように選択肢を持っておいたほうがいいよね」ということです。つまり、「今受験に出るような勉強をしておく」という選択肢を選ぶと、受験する、しないも選べるし、合格した学校に行く、行かないの選択もできる。可能性は広がっていくよね、と。もちろん、そんな選択肢はいらない、今はとにかく遊びたい、という子にはそれを尊重します。

安浪:こういう話をすると、そもそも中学受験の選択肢がないところにお住まいの方から、「うちは可能性が狭いのか」と言われそうだけど。

矢萩:いやいや、これはあくまで中学受験を考えている子の話で、一般論としてそれがいい、と言っているわけではないですよ。中学受験をしなくても、当然別の可能性はたくさんあるわけですから。

安浪:そうですよね。私たちが中学受験至上主義でないことは、この連載を読んでくださっている読者ならわかってくださっているかな、と。

■「受験はしたいけど、勉強はしたくない」

矢萩:僕が子どもたちに伝えたいのは、中学受験がいい、ということではなくて、勉強することも、受験することも自分の選択肢を増やすというか、自由に生きるために役に立つはずだよね、ということなんです。自分の将来の選択を「お母さんに言われるからやっている」のではなく、もっと主体的に考えて欲しい、自分軸を作って欲しい、ということ。何も決まっていないほうが自由なんじゃないか、と思う子もいるけれど、それは違うかもしれないよ、という。6年生ぐらいになるとそういうこともわかるようになるんです。まあ、その子の発達段階にもよりますけど。

安浪:結構6年生でも多いのが、「受験はしたいけど、勉強はしたくない」っていう子。親がブチギレるバターンですね(笑)。そういう子に「なんで受験したいって言っているのに勉強しないの?」って言ってもそこに理由はないんですよ。単に面倒くさい、やりたくないだけなんです。どうしても親はやらない理由や、「これからどうしたいの?」っていう結論を引き出そうとしがちなんだけど、そういう子には、どうしたいかを聞くのではなく、「とりあえず今日はこれだけやろうか」と淡々と課題を出すと、かえってホッとした顔をする。受験する理由をちゃんと持てて、それが行動に移せることがもちろん理想なんですけど、それができない子もいる。とりあえずここから降りたくないから、「何か与えて」っていうレベル子もけっこういるんです。

NEXT6年生の秋口まではぐちゃぐちゃある
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