主に乳幼児期の子育てについて解説したベストセラー本の『子育てハッピーアドバイス』(明橋大二著・1万年堂出版)では、子どもの自立について丁寧に解説しています。この本ではまず、乳幼児期の子どもにはたっぷり甘えさせることを勧めています。

「『赤ちゃんに抱きぐせをつけてはいけない』と、言う人がありますが、これは間違っています」と著者で精神科医の明橋大二先生は言い切ります。赤ちゃんならとにかくスキンシップ。抱っこされることによって子どもは「自分は大切にされている」と感じるので、大いにやってください、と明橋先生。そして、子どもの自立のステップについて、以下のように解説しています。

「『甘やかさないことが自立』と思われがちですが、自立のもとになるのは意欲です。意欲のもとは安心感です。安心感はどこからくるかというと、じゅうぶんな甘えからです。(中略)甘えない人が自立するのではなく、じゅうぶん甘えた人が自立するのです」(『子育てハッピーアドバイス』から)

 このフレーズは、私自身が多くの子育て本を読んだ中でも印象に残っている一節のひとつです。

 つまり、子どもの甘えは親への愛情確認でもあるのです。ですからそれに応えてあげることは自立を阻害するものではなく、むしろ必要なものなんですね。

 愛情を受けて、子どもの中に安心感が生まれると、「自分でやりたい」という意欲が出てくる。「○年生になったからやりなさい」と言われたからといって、意欲が出るものではない。これは、「新しい教育観」として知っておいたほうがいいと思います。

 明橋先生によると、「おもちゃ買って」「お金ちょうだい」という物質的な要求に無制限に応えることは「甘えさせる」ではなく、「甘やかし」。つまり、精神的な要求には応えてあげて、物質的な要求はきちんと制限するべき、と本の中で語っています。

「甘やかし」問題について、小学校の先生をしていた教育評論家の親野智可等先生にこんな問いをしたことがあります。

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