2人の息子がそろって高校中退――。そんな経験をしたのは、都内に住むインタビューライターの棚澤明子さん。現在21歳と19歳になる息子さんたちは、現在どのように過ごしているのでしょうか。「彼らを悲観して泣いたことは一度もない」という棚澤さんに、2人の息子さんが高校中退に至った経緯や、その後の様子について教えてもらいました。

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「お母さん、たくさん泣いたでしょう?」
「受験勉強に専念します」という“誓約書”を書かせる高校
診断は「過敏性腸症候群」
同調圧力と理不尽な校則と… “モノサシ”は1つじゃない 次の世界への扉は必ず開く

「お母さん、たくさん泣いたでしょう?」

 インタビューライターとして、これまでたくさんの方々、とくに困難を抱えながら子育てに奮闘するお母さんたちのお話を聞かせていただいてきました。

 そんな私の息子は現在21歳と19歳。なんと、2人そろって高校を途中で辞めています。「お母さん、たくさん泣いたでしょう?」などとよく言われますが、いま思えば、彼らを悲観して泣いたことは一度もありませんでした。それはなぜなのか? ほんの一例でしかありませんが、後に続く親御さんにとって少しでもヒントになれば……と思い、ささやかな体験をお伝えさせていただきます。

「受験勉強に専念します」という“誓約書”を書かせる高校

 将来の夢に向けて自分の方法、自分のペースで受験勉強に打ち込んでいた長男が高校を辞めたのは、3年生の夏休み直前のことでした。在籍していたのは新興の進学校で、先生たちの口癖は「指示通りの勉強をしていれば、有名大に入れる!」。自分の方法を貫きたい長男と生徒をコントロールしたい先生は、ソリが合わなかったのでしょう。衝突が続くようになり、次第に長男は体調を崩すようになりました。

 3年生になった4月、学校は3年生全員に「受験勉強に専念します」と印字した誓約書を渡し、サインして提出することを強いました。宛先は学校長と親です。「どうして自分のために勉強するのに、校長先生や親に誓わないといけないのか?」。納得がいかずなかなか提出しない長男に、学校からは早く出すようにと催促がきます。

診断は「過敏性腸症候群」

 そんななか、息子の体調は急激に悪化していきました。朝起きるとおなかが痛い。家を出ても、満員電車でおなかが痛くなって帰ってきてしまう。内科での診断は「過敏性腸症候群」。消化器に異常がないにも関わらず腸の不調が続く病気で、原因はストレスであることが多いようです。

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棚澤明子
ライター 棚澤明子

○棚澤明子(たなざわ・あきこ)/フリーライター。さまざまな社会課題をテーマに、インタビュー記事執筆に取り組む。自著は、『子鉄&ママ鉄の電車を見よう!電車に乗ろう!』(プレジデント社)、『福島のお母さん、聞かせて、その小さな声を』(彩流社)、『福島のお母さん、いま、希望は見えますか?』(彩流社)、『いま、子育てどうする? 感染症・災害・AI時代を親子で生き抜くヒント集35』(彩流社)弘田陽介氏との共著。最新著書に『生きる力を見つけた親子登山』(彩流社)がある。

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