言葉の力を育てるための唯一無二の方法

――俵さんは「言葉は生きるための力になる」とおっしゃっています。子どもの言葉を育てるために大人ができることはなんですか。

 ものすごくシンプルですが、本を読むことです。ほかのこととは比較にならないほど、圧倒的に言葉の力をつけてくれます。唯一無二だと思います。

 文字を読んで言葉を知るだけでなく、その意味を物語のなかで理解すること、想像力を働かせてイメージを膨らませることも含めて、読書は「言葉の畑」を耕してくれるものです。

――「本を読ませたいけれど、なかなか読まない」と悩む親御さんは多いです。

 名作でなくていいし、教育的なものでなくてもいいので、ぜひ1冊読み終える経験をさせてあげてください。

 私の息子は『かいけつゾロリ』(作・絵:原ゆたか、ポプラ社)シリーズが大好きで、図書館で「ここからここまでぜーんぶ読んだ!」ってものすごく自慢していました。『ゾロリ』は読書のおもしろさを体験するすごくいいシリーズですよね。

――親には「どうせ読むなら、こんな本」という願望があるかもしれませんね。

 あります、あります(笑)。私も最初は教育的によさそうな本ばかり選んでいたんです。でも二度、転機がありました。

 1回目は、私のいとこが息子に『ゆうれいホテル』(作・絵:アンティジェ・フォン・ステム、訳:きたむらまさお、大日本絵画)っていう仕掛け絵本をくれたことです。おばけとかゴキブリとか出てきて私は苦手だったんですが、息子はすっごく気に入って、絵本を使ってごっこ遊びまで始めました。

 2回目の転機は、新聞社の文化部の人に「俵さんがお子さんに与える絵本には、ナンセンス系がたりない」と言われたことです。おすすめされた佐々木マキさんの『ぶたのたね』(絵本館)のシリーズを読ませてみたら、これが大ウケで。

 いろんな大人に本を選んでもらうことも大事だなってつくづく思いました。

ゲームはおやつ。ゼロにはできない

――子どもたちのまわりには動画やゲームなど手軽に楽しめるコンテンツにあふれていて、なかなか本に手が伸びないようです。

 そうでした! 「どんな本を選べばいいか」なんて本の中で争っている場合ではないんです。そんな悩みは贅沢な悩み。ゲームという強敵がいました。

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