――俵さんは息子さんにゲームを禁止したりはしなかったんですか?

 わが家の場合、「ゲームはおやつ」と言っていました。ゲームや動画は楽しいけれど、受動的で想像力を働かせる余地がない。言葉を育てるには栄養不足です。

 だから「朝も昼も夕食もおやつだと体は大きくなれないよね。おやつと同じで時間と分量を決めて、1日の楽しみにしよう」と言いました。

 息子からは「うまいこと言うね」とほめられました(笑)。

――ゲームの時間は1日どのくらい?

 読書とゲームは同じ時間にするという約束でした。1時間ゲームしたかったら1時間本を読むんです。最初は「ゲームするために」と読書を始めるんですけど、読書はけっして苦行ではないし、本は本の魅力があります。息子は本もゲームも両方楽しんでいたと思います。

――本の魅力を伝えるために大切なことは?

 親が楽しそうに本を読むことだと思います。子どもって、大人が楽しそうにしている姿にあこがれるんですよね。

 私の母は新聞を読むのを毎日とても楽しみにしていて、大雪で朝刊が届かないときはイライラしちゃうんです。わざわざ販売店に電話して「お隣の〇〇新聞は届いてますよ」なんて苦情を言うほど(笑)。
そんな楽しいものが毎朝届くなんて、大人はいいなぁ、私も早く大人になって新聞を読みたいと思っていました。

 もう一つ、私が小学生のときに、勉強している私を見て父がしみじみとこう言ったんです。「あああ、今の子どもはいいなあ。好きなだけ勉強ができて」って。心の叫びがダダ漏れしているみたいでした(笑)。

――それが俵さんの「勉強好き」の原点ですか?

 そうだと思います。親が好きなこと、楽しそうにしていることって、子どもにも魅力的に見えると思います。ぜひそんな姿を見せてあげてください。

※関連記事<俵万智、寮に住む一人息子に6年間毎日ハガキを書いた理由 「書くのはものの数分。“なんでもない言葉”を届けたかった」​>から続く

(取材・文/神 素子)

【前編を読む】俵万智、寮に住む一人息子に6年間毎日ハガキを書いた理由 「書くのはものの数分。“なんでもない言葉”を届けたかった」
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神素子
神素子

ライター じん・もとこ/教育系出版社を経てフリーに。雑誌・ウェブ・書籍などさまざまな媒体で、子育て、教育、医療、介護、高齢期などをテーマに記事を執筆。

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