子どもが一生懸命スポーツに取り組んでいても、レギュラーになれない、試合に出られないということがあります。昨年末に行われたサッカーの全日本U12(12歳以下)選手権では、選手登録した小学生の2割が試合に出場しないまま大会を終えたことが話題になりました。スポーツメンタルヘルスの専門家で、小学生のパパでもある東京大学特任講師の小塩靖崇さんが、落ち込む子どもに保護者はどう寄り添えばいいか、つづってくれました。
【図説】ケース別:試合に出られず落ち込む子どもに向けた保護者のサポート(全4枚)「機会を与えられなかった経験」に向き合う必要がある
「出られなかった……」
スポーツの試合が終わった後、小学4年生の息子が静かにつぶやいたことがあります。練習を頑張っている姿を見ていただけに、その一言の重さが胸に残りました。
スポーツは子どもたちにとって、体だけでなく“心”を育てる機会でもあります。しかし現実には、試合に「出る子」と「出られない子」が明確に分けられてしまうことがあります。私は大学でメンタルヘルス研究をする者として、また一人の保護者として、子どもの「機会を与えられなかった経験」と、そこから生まれる“心の揺れ”に向き合う必要を感じています。
「どうして自分だけ出られなかったんだろう」「自分には価値がないのかな」――。子どもはそんな思いを、言葉にせず(できず)、心の中に抱えがちです。これは珍しいことではありません。こういったことの積み重ねが「自己否定感」や「孤立感」につながるケースも報告されています(※1)。
大切なのは「悔しい」気持ちを安心して言葉にできる雰囲気
私たち保護者の「何げない言葉」や「ふとした表情」は、想像以上に子どもの心に残るものです。例えば「次は頑張ろうね」という言葉は励ましのつもりでも、時には「今回はうまくいかなかった」という否定的な印象を強めてしまうこともあります。
大切なのは、試合への出場の有無にかかわらず、子どもの努力の過程やその子自身の存在を肯定する姿勢です。「練習で工夫していたね」「応援の声、しっかり届いていたよ」――そんな声かけが子どもの自己肯定感を支える大きな力になります。
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