僕だって、我が子の前では、「早くしなさい」としか言いませんからね。

  もう大学生と中学生なので、最近は気をつかってくれて、僕の本を読んだら「おもしろかったよ」と棒読みで伝えてくれますけど。

 ――なるほど、親子だとそういうものかもしれませんね。

 親子だからこそ伝わらないこともたくさんあります。だからこそ、子どもたちの近くには、親や先生とは違う、適切な距離の“ちょっと変な”大人が必要なんだと思います。そのことを、大人はわかっていなきゃいけない。

 親が子どもに直接あれこれお説教をしたり、教科書のような正しさを追求させようとしたりするのではなくて、誰からどんなふうに伝えてもらえば、子どもたちに響くのか――それを親は落ち着いて考えなくちゃいけないと思います。

 本や映画を通して、大切なことに気づいて吸収してもらうのも一つの方法。僕は絵本作家として、子どもたち――自分のうちの子”以外”の子どもたちに向けて、そうしたメッセージを伝えていくつもりです。

 そして、うちの子たちは、誰か別の身近な大人や、別の作家さんの作品などに触れて、そこから、世の中の姿を学んで貰えたらいいんじゃないかなぁ、と思っています。

(取材・文/玉居子泰子)

【前編】絵本作家・ヨシタケシンスケが語る息子たちの中学受験 「『逃げていい』とは言えなかったことが親としてつらかった
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玉居子泰子
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