そうして今回の展覧会に向けて描いたのが、絵本『まだ大どろぼうになっていないあなたへ』です。


何が悪くて何が正しいか 自分で考えることが大切
――ヨシタケさんの作品をはじめ、今回の展覧会には、大どろぼうの「悪」の中にも、素敵なところが感じられます。最近は、小中学生の子どもたちの多くが「正しさ」ばかりを求めがちかもしれません。
確かに大人も子どもも「正しさ」を求める風潮はありますね。でも、正しければなんでもいいのかというとそれは違う。たとえば、学校でも、多数決で決まる正しさをみんなが鵜呑みにするのは危ないな、と思います。
正解なんて時によって移り変わっていくものです。だから教科書的な正しさではなくて、自分にとって本当は何が大事で、何に価値があるのか、そういうことを子どもたちも、自分で考えなくちゃいけないんだと思うんです。
ちょっと変なおじさんのような存在からアドバイスをもらおう
――なるほど。なかなか難しくはありますが……。
昔は近所に、いつもぷらぷらしているような“ちょっと変な”おじさんがいて(笑)、そういう人からなんとなく、人生に大切なことを教えてもらえたりする機会があった。でも、そういう大人も少なくなりましたからね。
そんな時に助けになってくれるのが、絵本や漫画やアニメなどの物語。
物語こそ、本来の「正しさ」とは何か、本当の世の中のありようとは何か、ということをおもしろく伝え、考えさせてくれるものじゃないでしょうか。
――ヨシタケさんは、現在お二人のお子さんを育てていらっしゃいます。お子さんたちはお父さんの書く作品をどのように読んでいらっしゃいますか?
いや、うちの子どもたちにとって、僕は父親であって、「ヨシタケシンスケ」という絵本作家は存在しないので(笑)、僕の絵本はあまり読んでこなかったと思います。
僕も家に帰れば、ひとりのお父さん。世界中どこを見ても、父親のいうことを聞く子どもなんていません。親子の関係ってそういうものですよ(苦笑)。
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