本物と間違えるくらい完成度が高いということに、満足したこともあったかもしれません。その後、高校は美術科の道に進みました。

子どもが描いた一枚の絵から、いろいろなことが発見できます

――高校の美術科ではどのようなことを学んだのですか?

 具象絵画や色彩学などに出合いました。世界が広がって、楽しかったですね。人にはいろいろな才能があると思うのですが、僕の場合はそれがアートだった。一つの才能を広げられる手段が、アートだったんですね。

――どうすれば子どもの才能を見つけられるのでしょう。

 アートって、美術だけの話ではないと思うんです。例えば、すごくおいしい野菜を作ることもアートだと僕は思っています。その人にしか作れないもの、独特の感性のようなもの……。そうとらえると、親御さんも、アートからお子さんの才能を発見しやすいのではないでしょうか。

 僕のワークショップにはいろんな子どもたちが参加してくれるのですが、「絵が好き」ということは共通していても、一人ひとりの才能は本当に多様です。色には興味がないけれど「形」にセンスを発揮したり、絵を描きながらその中に「物語」を書いていたり。「絵がうまい」といった視点だけでなく、そこにあるいろいろな才能を見つけるのも楽しいです。

――その子なりの光るものがあるのですね。

 僕は、自分で「絵が好きだ」と気づいていました。でも、気づいていない子どももたくさんいるのではないでしょうか。それを教えてあげたら、子どもの喜びになると思うのです。僕は小中学校の時に友達から「絵がうまいね」と言われてとても嬉しかった。誰かに言われることで「あ、自分はこれが好きなのかもしれない」「得意なのかもしれない」と気づくことができるのです。

 もちろん、絵だけでなく文章や音楽、運動……。さまざまなきらめきがあると思います。そこを見つけて伝えてあげられるといいですよね。

夏休みに、時間をかけて「売っていないもの」を作ってみよう!

――夏休み真っ最中です。山下さんは小学生時代、どのように夏休みを過ごしていましたか。

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