「子どもへの遠慮には、ふたつ意味があると思うのです。ひとつは、親が子どもに『こういうことをやってほしい』『こうあってほしい』ことがあり、そこに仕向けたいがためにご機嫌取りのようになっている。たとえば、習い事や勉強ですね」(親野さん)
これは、望ましくない「遠慮」。
「もうひとつの遠慮は、子どもをひとりの人間としてリスペクトして、きちんとした言葉づかいで向き合って話したり、その行動に口を出したりしない。基本的に『見守る』ことです。一歩引く姿勢が遠慮のように感じることもあるでしょう」
ふたつの遠慮は、意識して分ける必要があります。
「大人がリスペクトすることで、子どもは大きく成長します。しかし、ご機嫌取りとごちゃまぜにしてしまうと、子育てに悩むことがあるかもしれませんね」
2.「これでOKなんだ」と認識できる「 あたりまえ」 に 目を向ける
たとえば、きょうだいげんかが始まって「こら! またきょうだいげんかして!」と思わず声を上げることはよくあるものです。
「こんなふうに、“叱る場面”から入ることって、実はとても多いのです。すると、子どもは『あ、僕たちは仲が悪いんだ』と否定的なイメージができてしまいます」
ふだんは仲よく過ごしているのに、けんかの場面だけ目について言葉にしてしまう……。
「いつもはきちんと食べているのに、こぼしたときだけ『ほらー、こぼした!』という具合です。
きちんとできている『あたりまえ』をもっと伝えてあげましょう。難しく考えず『仲よしだね!』『きれいに食べたね』と言語化すればいいのです。子どもは、『これでいいんだ』と自分に自信を持つことができます。これも“ほめ”の一種。これがないと伸びません」
3.子どものスイッチが 「オン」になるために「共感」する
片づけをしない、朝起きない、忘れ物が多い……。つい叱りたくなる場面です。
「でも、子どもは今、その『改善』を必要と感じていないから、そのままなのです」
その気がないのに、直させようとしてもうまくいかないもの。
「もちろん程度にもよります。でも、失敗して大反省したり、夢が見つかってがんばろうと思ったりと、いつか必ず『自己改造』が必要になるときがきます。そしてそのスイッチを押すのは子ども自身なのです」
そのために、親が大切にしたいことは、子どもに「共感」する姿勢と親野さん。
「否定されてばかりでは、いざというときに子どもは前に進めません。日ごろから、大人が子どもに『共感』することで、子どもは自分に自信がもてる。そして、スイッチが押せるのです」
(取材・文/AERA with Kids編集部)
朝日新聞出版

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