「顔がまだできあがっていない2、3歳頃までの、裸ではない“かわいい写真”を載せることは否定しません。この頃と大きくなってからの顔を比べると同一人物とは思えないほど変化することが多いですから。これはデジタルタトゥーとは違うのかなと。

 小さい頃の育児は大変です。ワンオペになることも多いです。そんな憔悴しきっているときに、SNSの存在に救われたという親御さんたちはたくさんいます。追い詰められてうつになりそうなとき、子どものかわいい写真を投稿して『かわいいね』と言われたら、やっぱりかわいいと思える。SNS上で情報交換したり慰め合ったりもできる。先輩パパママにアドバイスももらえる。だからなんでもかんでもダメではなくて、SNSも使いようだと思います。

 ただ、今は生成AIで勝手に画像を作り替えられるリスクもあります。それを考慮すると横顔や後ろ姿、かわいい手や足、顔にスタンプなど出し方を工夫するといいですね」

 ただ、冒頭の女性のように危うい投稿も後を絶ちません。学校名は隠しているのに特徴的な制服姿の写真、背景や行動範囲から分かる最寄駅、旅行中で留守が分かるような投稿も目立ちます。こうした親のリテラシーの欠如は、知識不足から来ると高橋さんは指摘します。

「SNSが始まってから約20年、iPhoneが発売されてから約15年。つまりだいたいの保護者は成人したあとにSNSやスマホを使い始めていて、今の子どもたちのようなリテラシー教育を学校で受けていません。今のZ世代はデジタルネイティブの世代。小学生のうちからリテラシー教育を受けていて、大人よりよっぽどリスクも分かっています。SNSのアカウントを鍵アカ(非公開アカウント)にしたり、アイコンも顔写真にしていなかったり。そもそもそれほど投稿していないという子も意外と多いです。芸能人の方も旅行は時差投稿にしたり、子どもの顔出しはしないようにしたりと工夫されています。SNSの投稿の判断に迷ったら、子どもや芸能人をお手本にするのもいいかもしれません」

(取材・文/大楽眞衣子)

「ピースサインから指紋が盗まれる」よりも怖いSNS投稿に潜む危険
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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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