ミリオンヒットを記録したKing&Prince『ツキヨミ』やSuperfly『愛をこめて花束を』など数々の大ヒット曲を生み出した作詞家・いしわたり淳治さん。音楽プロデューサーとしてチャットモンチーなどのアーティストを世に送り出しています。言葉の可能性を切り拓き続けるかたわら、気になる言葉を集めてエッセイを綴る「ワードハンター」でもあります。「言葉」に敏感になった背景や、2人のお子さんを持ついしわたりさんが子どもの言葉の力を育てるために大切にしていることを聞きました。※前編〈「長男の漢字テストの間違いを見るのが大好き」 『愛を込めて花束を』作詞家・いしわたり淳治が語るわが子の言葉の面白さ〉から続く
【写真】5歳当時のいしわたりさんはこちら(ほか、全2枚)ぼくは本を読まずに作詞家になった
――文科省では「国語力を身につけることが重要」と言われていますし、最近は「言語化力」も注目されています。わが子の「言葉の力」を育てたいと思ったとき、大切なのはやはり本を読ませることなのでしょうか。
実を言うと、ぼく自身は本をまったく読まない子だったんです。雑誌は読んでいましたが、小説を一冊も読んだことがないまま作詞家になりました。
――それは驚きです。では、いったいどこで「言葉の力」を身につけたのですか?
普段の会話や、テレビから聞こえてきた言葉だと思います。
「本を読まないと言葉の力は育たない」という人もいますけれど、ぼくは別のところから言葉を学んできたし、それで苦労したことはありません。
植物が少ない水でも育つように、子どもは何だって栄養にする。「こうしなくちゃダメ」と無理やり押しつけることが、一番子どもの可能性を狭めるのではないかと思います。
全部「ヤバイ」で表現していい?
――SNSの影響で短い言葉や絵文字ですませてしまうことも増えていますが、表現力が身につくのかな……と心配になります。
言葉は感情表現のためのツール、つまり道具だと思うんです。自分の気持ちが伝えられるなら、短い言葉でもいいと思います。「みんなが使っている言葉を使うほうが生きやすい」と思う子もいるでしょうし、それも一つの選択です。
ただ、楽しくてもヤバイ、おいしくてもヤバイ、つらくてもヤバイ……これで本当に気持ちが伝わっているのかな、表現できているのかな、そういうことに気づくことができる人にはなってほしいですね。
みんなが「ヤバイ」しか使っていないのであれば、そうではない言葉が使えるだけで個性のブルーオーシャン(未開拓の世界)に出られるわけです。
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