例えば「田」という字。日本では「書きやすさ」「整えやすさ」を重視して3画目が真ん中の縦です。一方、中国では3画目に真ん中の横が来て、次に縦、横。つまり「土」の字を書きます。中国は「覚えやすさ」を徹底追求しているからです。

――学校で習う漢字の書き順はどの程度覚えていればよいのでしょうか。

 私の個人的な立場からいうと、書き順を絶対視する必要はないと思っています。なぜなら書き順は文字言語ではないからです。文字言語を書き上げるための手段でしかない。そういう意味で言えば覚えているだけでは何にもならないんです。書き順は、整えて書きたい、効率よく書きたい、効率よく漢字を覚えたいという動機のもとで書き手にメリットはありますが、そんなに厳密に守ろうとしなくてもいいのではないかと思います。

 個人的には書き順は小学3年生くらいまで一生懸命覚えればよいと思っています。1年生で「木」を習いますが、これはへんやつくりでよく出ます。こうした汎用性の高い基本的な漢字が出尽くすのがだいたい3年生くらいまでです。4年生で習う「飛」のような特殊な形の漢字はその都度覚えた方がいいですが、高学年以降に習う基本的な組み合わせの漢字は書き順を気にする必要はないと思います。

「飛」が最も検索されやすい理由とは

――Yahoo!検索では2024年12月、「漢字の書き順検索ランキング(小学校編)」を発表しました。1位「飛」、2位「馬」、3位「右」、4位「上」、5位「必」と続きますが、なぜ「飛」が最も検索されやすいのでしょうか※。

「飛」は汎用性が低い漢字だからです。この漢字は類似の形がありません。だから書き方を思い出そうとしても手がかりがない。そのため検索されやすいと言えます。「必」については案外思い込みで「心」を書いてから斜めのはらいを書く人が多いんです。なのに子どもは1画目が真ん中の点だと習ってくる。それを確かめるためによく検索されていると思われます。

 書き順を検索する人が多いというのは、子ども時代に漢字をたくさん練習した自負があり、「書き順だけには自信があるんだ」と思う大人が意外と多いからではないでしょうか。

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