都内で中学受験塾「應修会」を主宰する茂山起龍(きりゅう)さんは、受験後も教え子たちと交流を続けるなかで、生徒たちの“その後”を見つめ続けています。AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。最終回は、中学受験に向かう子どもたちを14年指導してきた茂山さん自身が思う「中学受験の意義」について、つづってもらいました。

MENU 中学受験を「してよかった」「させてよかった」 「僕が中学受験をしてよかったと思っていますか」への答えは… 中学受験をしたほうがいいか、の質問に対する答えはない 「中学受験、その先に」無条件に何かが用意されているわけではない

中学受験を「してよかった」「させてよかった」

 私は「しなくてもよいもの」である中学受験を経験し、それを仕事としていて、我が子にも経験をさせた。私自身はしなくてもよいそれを「してよかった」と現時点では思っている。卒業後、顔を見せてくれる卒業生のことを考えても「いいものだな」と感じるし、我が子を見ても「させてよかった」と考えている。ただし、卒業生や我が子がどう思っているのか、他人である私に本当のところは分かりようがないが、過去一人だけ僕自身に「先生は僕が中学受験をしてよかったと思っていますか」と問われたことがあることを思い出した。

 その子は卒業してずいぶん経った子で、私と話をしに教室にふらっとやってきた。あまり明るい顔はしておらず、「何かあった?」と聞くとおもむろにぽつりぽつりと話し始めた。

 具体的な話はここで明かすわけにはいかないが、つまり、はっきりとした何かがあったわけではないようだが、いわゆる「充実した楽しい中高生活」を送れたわけではなかったようだ。楽しいことがなかったわけでもないが、つらいことが多かったと言う。日々いろいろうまくいかず、悩んでいたようだ。「なんで言いにこなかったの?」と聞くと「なかなか言い出せなかった」と。そんな子に「それでも僕はしてよかったと思いますか」と問われた。数年ぶりにその子から「質問」をされて私は返答に困った。相当悩んだうえで「答え」を私に聞きに来たわけだ。「そんなの分からないよ」と突っぱねるわけにはいかない……。

「僕が中学受験をしてよかったと思っていますか」への答えは…

 私はその子にこう伝えた。

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茂山起龍
中学受験塾「應修会」塾長 茂山起龍

しげやま・きりゅう/1986年生まれ。中学受験を経験し、大学附属校に入学。大学在学中から個別指導塾、大手進学塾などで中学受験指導に携わる。会社経営の傍ら、2011年、東京・西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。自らも教壇に立って指導を行う。中学2年、小学6年の男子の父。X(旧Twitter)での中学受験についての発信も人気で、フォロワーは1万人を超える。X: @kiryushigeyama

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