2024年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。そもそも「無形文化遺産」とはどのようなものでしょうか? 同じくユネスコの事業である「世界遺産」や「世界の記憶」との違いや、登録されることによるメリットなどについて、小中学生向けのニュース月刊誌『ジュニアエラ2025年2月号』(朝日新聞出版)からお届けします。※後編<無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」の魅力とは? 海外や訪日外国人客からの「日本酒」需要にさらなる期待も>に続く
【図版】日本の「無形文化遺産」、いくつ知っている?無形文化遺産とは?
――「伝統的酒造り」が無形文化遺産になったというニュースがありましたが、無形文化遺産とは何なのでしょうか?
ユネスコ(国連教育科学文化機関)がこれからもずっと守るべき文化遺産だと認めたものを登録するしくみです。芸能や祭り、社会的慣習、伝統工芸技術などを対象にしています。これまでに日本からは歌舞伎や和食、和紙など22件が登録されていて、伝統的酒造りは23件目になります。
――「世界遺産」とは、どうちがうのでしょうか?
どちらもユネスコの事業ですが、世界遺産は遺跡や自然といった形のあるものが対象です。無形文化遺産はその名のとおり、形のない技術や風習等を対象にしています。ユネスコは「世界の記憶」という事業もやっていますが、こちらは文書や絵画などが対象です。後世に残すべき大切なものを守るという点では同じですが、対象のちがいによって事業を分けています。
――登録されると何かいいことがあるのでしょうか?
伝統的酒造りによってできる酒は日本酒、焼酎、泡盛、みりんなどですが、一番いいことは登録されることで、こうした酒の知名度が世界で上がることでしょうか。日本酒などの業界は今、海外でもっと飲んでもらおうと努力していますが、登録されることで飲んでみようと思う外国人が増えることが期待できます。ほかにも伝統的酒造りを守るためにお金を補助してくれるなどの国や自治体のサポートも期待できるかもしれません。
「世界遺産」「無形文化遺産」「世界の記憶」をおさらい
【世界遺産】
遺跡や自然といった形のあるものが対象。文化遺産、自然遺産、両方を兼ね備えた複合遺産の3種がある。現在、日本には文化遺産が姫路城(兵庫)など21件、自然遺産が屋久島(鹿児島)など5件あり、複合遺産は0。
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