卒業後は、就職や転職をしながら、デビューが決まるまで会社員と音楽活動を並行していたんです。
―――なかなかデビューできない中で、「音楽をやめようかな」とは思いませんでしたか?
「やめる」という選択は、“仕事”になってから生まれる感情ですよね。当時は、まだ夢を追いかける立場。「もっとできる」「本当はいける」と思っていたから走れたんです。ですから、逆に今のほうがしんどく感じることはたくさんありますね。
―――自分の「好き」を追いかけられることは、大変ですが幸せなことだと感じます。今、その「好き」がわからない、見つからないという声も多いですが……。
なにかを好きになるきっかけって「あ、これは自分に向いているかもしれない」と感じるときだったりしませんか?
たとえば、僕は最初に路上ライブで歌ったときに、知らない人が足をとめて歌をほめてくれたり、感想をくれたりしたことが嬉しくて、「自分は音楽が向いているのかもしれない」と、音楽をどんどん「好き」になっていったんです。自分が少しでも得意と思えることに出合うと、それが好きになって、やりたいことになっていく。
しかし、今はSNSなどで、自分が「向いている」と思うことをもっと上手に、熟練した技術で発信している人をかんたんに目にできる時代。すると、「こんなふうにはなれないな」ってあきらめたくなってしまいますよね。ですから、「やりたいこと」を見つけようとしても、なかなか難しいのではないでしょうか。
でも、そんな中でほんの少しでも「得意かな」と思えるものが、自分の中に芽生えるときがあると思うんです。そのときに、いくつも「選択肢」を持てるようにしておけばいいのではないでしょうか。たとえば、勉強をがんばっていたら、その知識があるからこそ目指せるものがあるし、将来の選択肢も広がりますよね。お金をためておくのもいいと思うんです。
ですから、子どもの質問でよく耳にする「なぜ勉強するの?」という質問に、僕なら「やりたいことができたときに役立つからだよ」と答えます。これは、あくまで僕の場合ですが。
好きなことややりたいことを「見つける」よりも、それを見つけたときの準備をしておきましょう。「これかな?」と思う瞬間はきっとやってきます。
※前編<「放課後カルテ」主題歌wacci橋口洋平に聞く中学受験“全落ち”の過去「親の期待にこたえられないふがいなさがあった」>から続く
(取材・文/三宅智佳)