たとえば、3つの小問で構成された大問が複数ある試験の場合。各大問において、たいてい1番目と2番目の小問は教科書的な素直な問題で、3番目の問題が難しい応用問題です。

 したがって、1番と2番の小問は確実に解き切る。3番目の問題を読んですぐには解けないなと思ったら、次の大問に進む。この繰り返しで最後まで一通り進み、時間に余裕があったら、残してきた難しい問題に戻ります。

 このとき、3番目の小問に試験時間ギリギリまで取り組むのではなく、解けたと思われる1番目と2番目の小問の検算の時間を確保しておきます。すべての問題を解こうとすることよりも、計算ミスだけは絶対にしないことを優先するのです。試験のラスト5〜10分は、もう問題を解きません。解いた問題の計算ミスをひたすら探します。

 ある種テクニックの話になりますが、算数・数学が得意な子どもというのは、試験で当たり前のようにこのように振る舞っているんですね。

 そして、実はこのテクニックは、日本屈指の高難度とされる東大入試数学の攻略法でもあります。東大の入試数学はおよそ5割得点できれば合格ラインです。 「すべての問題を解く必要はなく、標準的な難易度の問題だけを確実に得点すればいい。計算ミスだけは絶対にしないよう、検算に十分な時間を使わなくてはならない」ということを、合格者はみんなわかっていて、そのように振る舞っています(ただし、理科三類だけは例外で、数学でも高得点が要求されますが) 。

 入試(模試)問題は100点満点を取ることが期待されるテストではありません。自分の実力を確実に発揮すること、試験の瞬間に自分が解けるものを確実に点数に変えることが肝要ですし、試験の目的にもかなっています。

 解けるはずの計算問題をケアレスミスで落とした結果45点、50点に終わるのと、解ける問題の点数を確実に積み上げて65点、70点を取るのとでは、親御さんが受ける印象以上に子どもが感じる「手応え」が変わってきます。

「このレベルの問題について、自分は確実に得点できるんだ」という自信がつけば、子どもの学習へのモチベーションも高まり、成績向上への好循環が生まれます。

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今木智隆

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今木 智隆
今木 智隆

RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザ行動調査・デジタルマーケティング領域専門特化型コンサルティングファームのビービット入社。金融・消費財・小売り流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年から同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。 タブレットを利用した小学生の算数の学習教材「RISU算数」で、のべ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。

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