修学旅行無償化の施策は、特に子育て世代からの支持が大きく、区民からはおおむね好感を持って受けとめられたようだ。

 給食費の無償化に続く修学旅行無償化は、若い家族層を同区へ呼び込む狙いもある。同区ではほかにも、小5、小6、中2で実施している宿泊を伴う移動教室の無償化、各校共通の副教材費の無償化など支援の拡大を打ち出している。

「これから少子化の時代を迎えていく中で、自治体の力を維持していくためにはやはり一定の人口が必要です。教育や子育てへの支援は、将来につながる投資。青木克徳区長も、子育て支援を区政の最重要課題と位置付けています」(羽田さん)

無償化している自治体は?

 修学旅行費をめぐっては、大阪府豊中市、青森県南部町も24年度は無償化を実施しているほか、東京都港区では全区立中学校でシンガポールへの修学旅行を行い、家庭の負担を一律5万円とし、超えた分を区がまかなう施策を実施(AERA with Kids+2024年9月26日配信)。補助を始めている自治体とそうでない自治体とで、家計の負担はかなり差がある。

 教育経済学を専門とする慶應義塾大学経済学部の赤林英夫教授はこう語る。

「日本の学校教育は、政策の基本部分は文部科学省が決めていますが、細かなところは自治体の裁量に任されています。これは、州ごとに独立して教育政策を打ち立てているアメリカに通じる点でもあります。修学旅行に限らず自治体間の違いは昔から存在していますが、その一つ一つを取り上げてネガティブに考えるよりは、他の自治体をヒントに、“自分の自治体では子どものためになにができるか”を考えるための気づきにつながればいいのではないでしょうか」

(取材・文/柿崎明子)

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ライター 柿崎明子
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