熊本県の八代海で見られ、古くは妖怪の仕業と考えられていた「不知火」。熊本県立宇土高校「科学部地学班」の生徒たちはその謎に挑み、9月3日未明、不知火とみられる現象の撮影に成功したことがニュースになりました。「不知火」とは一体何なのか、また宇土高校「科学部地学班」では、これまでどのような活動、実験をしてきたのでしょうか? 小中学生向けのニュース誌「ジュニアエラ9月号」(朝日新聞出版)からお届けします。
【写真】不知火が現れる環境を教室で再現!結果はこちら夏の夜、海上に現れる怪しい光「不知火」とは?
九州の八代海(不知火海)には、八朔(旧暦の8月1日/今の暦の8月下旬~9月)のころ、海上に「不知火」という怪しい光が現れると古くから言い伝えられてきた。不知火とは、海上に現れた光が横方向に分かれ、流れて連なったり揺らいだりするという現象だ。
江戸時代までは妖怪の仕業とされてきたが、20世紀になると、遠くに見えている景色が変形して見える「蜃気楼」の一種と考えられるようになった。けれども、詳しい原因やしくみについては未解明で、謎に包まれていた。1988年の例を最後に不知火が観測されなくなったこともあり、最近はほとんど研究が進んでいなかった。
そんな不知火の謎を解き明かそうと、熊本県立宇土高校「科学部地学班」の生徒たちが7年前から代々受け継ぎ、研究に取り組んでいるのだ。
空気の温度の違いで不思議な現象が起きる
地学班は、不知火の観測に昨年までの6年間で計23回、挑んできた。不知火が観測されやすいとされる永尾剱神社付近から海を見つめて、不知火の出現を待ったのだ。
すでに卒業した先輩たちは、海上に光が現れ、その光の数が変化する不思議な現象を何度か目撃した。不知火ではないかと考えられたが、詳しく調べ直してみると、光が横方向に分かれ、流れて連なったり揺らいだりする不知火ならではの特徴がなく、「下位蜃気楼」に分類すべきとわかった。これは「浮島現象」とも呼ばれ、全国各地で見られる現象だ。現在の班員は、不知火は光が横方向に分かれる「側方蜃気楼」の特殊な形だと考えている。6年間の観測では、そうした例は、一度も確認できていない。
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