自分の”真骨頂”を発揮できることが大事

 認知能力は成果がわかりやすいので保護者はそちらに目が行きがちですが、コミュニケーションのような目に見えない能力、すなわち非認知能力を育てることが大切です。

 私は「夢中力」と呼んでいますが、子どものころは何かに没頭する体験が大事です。私が敬愛する吉田松陰は、「どんな子どもでも必ずひとつ才能があるから、それを磨いて私の真骨頂はこれです、と胸を張って言えるようにするのが教育である」と唱えています。これからの時代にも、ふさわしい思想だと思います。

 そのためには親が子どもを信じること。遊びや学びを通して子どもに自己選択、自己決定を経験させましょう。「転ばぬ先の杖」を与えて、過剰に口や手を出すと主体性が削がれてしまいます。むしろレジリエンス(回復力)が強い子ども時代に失敗をさせるべきなのです。京都大学の研究によると、高2ぐらいまでに探究的な学びを経験しておかないと、その後の成長が鈍化するそうです。

豊かさの指標はWell-beingへ

――今の未就学児が成人年齢を迎える2040年ごろは、若年人口が減って、経済もマイナスになり日本は衰退の一途をたどりそうです。

 確かにGDPは下がりますが、2040年ごろにはいろいろな国の人材がチームを組んで、グローバルチームとして仕事をすることになります。アジア、欧米、時にはアフリカ、南米の人がいるかもしれません。国が交ざり合うと、GDPという経済指標は、意味がなくなります。両親の国籍が違ったり、あるいは二重国籍が当たり前になったりすると、国籍の意味すらなくなります。

 いろいろな得意分野を持った人がチームを組んで仕事をすることを私は「ソーシャルオーケストレーション」と呼んでいますが、複数の人間が異なる楽器でひとつの音楽を奏でる、そんな社会になっていると思います。

 私は以前から「卒近代」を提唱してきましたが、今、世界で「Beyond GDP」という言葉が使われ始めました。経済成長ではなく、人々の生活の豊かさを複合的に表す「Well-being」がGDPに代わる評価指標として認識され始めているのです。

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