交通事情や街の変化と共に学校も変化
戦後も、前述したように「バレーの中村」としては有名でしたが、中学受験の中ではそれほど注目を浴びる私学ではありませんでした。ただ、時代の変遷と共に、交通事情が変化し、さらに時代に合わせて中村も変化していきました。
交通事情の変化で大きいのは、地下鉄の延伸です。まず1990年に、営団(当時)地下鉄半蔵門線の三越前―水天宮前間が開通し、半蔵門線沿線の私学となりました。ただし、この段階では、水天宮前駅から徒歩15分くらいを要していました。実際、便利になったのは、2000年に都営大江戸線の清澄白河駅が開業し、2003年に水天宮前―押上間が開通して東京メトロ半蔵門線の駅にもなった時です。前述したように駅から徒歩3分という交通の便の良さでした。さらに、押上まで開通したことにより、城東地区からの受験生を多く迎え入れることができるようになりました。実は江東区がとても便利になったのはこの20~30年ほどで、それまでは都心には物理的には近いが、意外と不便な場所だったのです。地下鉄(東京メトロ、都営大江戸線)のほか新交通ゆりかもめ、りんかい線などが続々と開通し、見違えるほど便利になったのです(これらの路線は中村とは直接関係ありませんが)。
このような交通の変化と合わせて、1999(平成11)年に現在の校舎が、そして2012年に後述するラーニングコモンズなどを備えた新館LADYが完成、教育内容としても、2000年に高校普通科の中に国際コースを新設、2005年に国際コースを正式に国際科に改組、中学からのキャリア教育も徐々に整備し、「スポーツに特徴のある高校主体の私学」から「中高一貫教育校としての私学」へと変貌していきました。
今、首都圏では生徒たちが自主的に学びを進める空間としてのラーニングコモンズや伸びやかな学習スペースも兼ねた図書館が大きな潮流となっていますが、中村はその流れに合致しています。写真で紹介している本館のコリドール(図書室)は訪れた受験生も圧倒される素晴らしさ。大きな窓の外には、清澄庭園の豊かな緑が広がっています。春夏秋冬の移り変わりを日々体感できるぜいたくさです。また座り心地の良いソファなども完備していて、くつろぎつつ学べる空間でもあります。校舎は築20年以上ですが、このあたりの建築は先見性があったと言えます。
仲間と共に学べる空間としては、本館に隣接する「新館LADY」も充実しています。友達と共に飲んだり食べたりしあえる、まさにラーニングコモンズとしてのCAFÉ MiyaKoDoriがあります。一方、自分一人で学びに集中したい場合は、プラットホームのようなスペースもあります。このあたりは新館LADYの建築後にリノベーションしています。
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