とくに思春期で反抗期のお子さんを持つお母さんは忍耐と寛容さが試されるとても苦しい時期ではあるのですが、その時期にも、お母さんが自分自身の時間や自分の気持ちを大切にして、やりたいことをやって(笑顔ですごす)ことも大事です。

 このお母さんは自分の仕事をやめて、つきっきりで娘さんについていたのですが、娘さんはもう中学生です。むしろ仕事をやめたことで、よけいにお母さんが追い込まれていったようにも私は感じました。そこで、「仕事をしたいと思われるなら、少しずつ再開してみたらどうですか」とお母さんにお話ししてみました。

 また、娘さんに対しては怒らせないように毎日気をつかい、腫れ物に触るようにすごしていたそうですが、「お母さんのすごしたいようにすごしてみたらどうですか」という話をお母さんにしたら、あるとき、ずっと我慢していた旅行に息子である弟さんと2人で行ったそうです。

 最初は、娘を置いて旅行に行くなんてとても考えられなかったそうですが、思いきって行ってみたら、娘さんは留守中もおだやかにすごせていて、家で暴れることもなかったし、弟さんもとても喜んでくれたと話してくれました。そうやって、お母さんがやりたいことをやるようになったら、徐々にお母さんにも余裕が出てきて、笑顔ですごすことも増えていきました。

 ただし、娘さんが学校に行けるようになったわけでも、昼夜逆転の生活が変わったわけでもありません。ただ、それに対するお母さんのとらえ方やお母さん自身のすごし方が大きく変わったのです。

 そのお母さんはご自身でもいろいろな本を読んで試してみたり、子どもたちを大学の心理相談室のカウンセリングに通わせたりするなど、熱心に「やるべきこと」をやられていて、クリニックに最初に来られたときは、とにかく娘さんのことも、自分のことも、家族のことも全否定されていました。こんなに見苦しいわが家をどうすればいいのか、とにかくなんとかしてほしい、という感じでした。

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