――なぜ自治体によって差が出てくるのでしょう。

 法人住民税や個人の住民税が多い自治体は財力があるので、私立高校への助成をはじめとした少子化対策に力を入れられるのでしょう。

 特に東京都は近年、異次元とも言える少子化対策が行われています。子どもが増えないと国の活力が衰えてしまいますし、将来の労働力にもなりません。出生率を上げるために、子育て支援策が次々と決まっている印象を受けます。

――異次元というと、どのような?

 23年度から「018サポート」がはじまりました。18歳以下の子ども1人当たり、月額5000円を支給する事業で24年度も支給される見込みです。

 22年度からは「受験生チャレンジ支援貸付事業」の支援対象を拡大しています。これは、高校や大学への受験生を対象に、塾や通信講座などの受講料や受験料を無利子で貸す制度です。この制度があるのは東京都だけです。あまり宣伝してこなかった事業なので知らない人が多いですが、10年以上も前からある制度です。

 塾の受講料は上限20万円、受験料は、高校受験の場合で上限2万7400円、大学受験の場合は上限8万円。高校や大学に入学した場合、返済は免除されます。中学3年生の際に利用しても高校3年生で、また利用を申し込むこともできます。以前は、支援対象世帯は年収380万円ほどまでと、子どもを大学に行かせるための塾代に本当に困っている世帯向けの支援策といったイメージでしたが、22年度から支援対象世帯が年収500万円(世帯人数4人の場合)レベルにまでなりました。

 ひとり親世帯には子ども1人当たり1万3500円の児童育成手当もあります。この制度があるのも東京都だけです。

――子どものいる家庭は、東京に引っ越しを検討したほうがいい気もしてきます。

 たとえば埼玉県和光市は都境で、練馬区などと接しています。練馬区に住む親子と和光市に住む親子が、同じ公園で遊んでいますが、埼玉県か東京都で補助には違いが出てくる、という状況です。

 私立高校の助成のことだけを見て引っ越しというのはナンセンスですが、他の子育て手当を考えると、迷うところです。持ち家の人は難しいでしょうが、賃貸で東京勤務、東京近郊に住んでいる人は検討の余地があるかもしれません。

(構成/永野原梨香)

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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