子どもの「行きたい」学校と親の「行かせたい」学校が一致しないとき、親はどこまで子どもの気持ちを汲み取るべきなのか、迷う家庭も多いはず。ましてや、大変な思いをして合格したにも関わらず、地元の公立中学に行きたいと言い出したら……。今回は、そんなどんでん返しの経験を経て、地元の公立中学を選び、高校受験も経験したHくん(現在大学3年生)親子のストーリーを紹介します。
【マンガ】中学受験「全落ち」した子はかわいそう? 大人の“勝手な思い込み”に気づかされた、子ども同士の会話とはサッカーを続けながら中学受験に挑戦
サッカーとピアノを習っていたHくんが中学受験をしたいと言い出したのは小学5年が終わる頃。同級生のお兄さんが、中高一貫校でサッカーをしながら、生き生きと中学校生活を送っている姿を見て憧れるようになったのがきっかけでした。
「学校の勉強をおろそかにしないこと」を大前提として、通える範囲の塾を4校見学し、体験授業を受けて少人数制の個人塾に通うことにしました。都立中学が第1志望校だったこともあり、作文の基本的な書き方や自分の考えをうまく相手に伝える練習などに力を入れている塾を選択したそう。
5年生後半という遅めのスタートだったため、平日は塾で居残り勉強をしながら、土日はサッカーも続けるというハードな毎日。塾では書く力をつけるために、自分の行動を振り返る作業や、わざと先生から反対の意見を突きつけられて自分の内面を深く見つめる授業など、小学生にはハードルの高い内容もあって、泣きそうな顔で塾から出てくることもあったとか。それでも頑張ってくらいついていく姿を見て、お母さんはお迎えを欠かさないようにして見守ったと言います。
頑張りに比例して学力も順調に伸びていき、いよいよ2月、受験に突入。憧れだった第1志望の都立中学校には受からなかったものの、ほかにも受験していた私立中学校には、複数合格できたため、両親は入学金の準備や制服、通学手段などについて考えを巡らせていた、その時――。
「受かった中学には行かない」
「え? どういうこと?」
「僕、地元の公立校に行くから」
「え? ちょっとよくわからないんだけど……。どうしてそうなるのか説明して……」
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