「第1志望以外はピンときていなかった」Hくんが明かした本当の思い

 Hくんは「第1志望校には行きたかったけれど、ほかの学校は見学会に行っても正直あまりピンときていなかった」と打ち明けたのです。そして、お父さんお母さん、塾の先生など大人たちが自分を一生懸命応援してくれているのがわかったから、なかなか本当の気持ちが言いにくくなっていた、と。結局、仲良しの同級生はほとんど地元の中学に行くし、そこで友達と頑張って再度、高校受験にチャレンジをしたいと吐露したそうです。

 小学生くらいの年齢では、日々気持ちも変わるだろうし、大事な岐路について、安易に子どもの意見を鵜呑みにしていいものかどうか、両親は頭を悩ませ、大人同士で話し合いました。

 これだけ大変な思いをして1年間過ごしてきたわけだし、第2志望校にせっかく合格したんだから、それを捨ててしまうなんてもったいない……。高校受験をしないですむのだから、部活をしながら伸び伸びと生活させたほうがいいのではないか。それに、公立中学に行くということは、周囲の人たちに「全部落ちたのね」と思われるのではないか、などというモヤモヤした気持ちもあったと言います。

 けれども、もともと両親には「わが子には誰かと比べて、できた、できないと判断するような人生は送ってほしくはない。自分ができたことを喜べる人間になってほしい」という理念がありました。そう考えたとき、Hくんはこの1年間でいろいろなことができるようになったことに気づいたのだそうです。

 学力がアップしたことはもちろん、自分の意見をしっかりと持ち、それを伝える語彙力や構成力などを身に付けていました。ゲームは1時間にしよう、とか、学校の宿題は休み時間に終わらせてしまおうとか、自己管理能力がついてきたのも感じました。それが中学受験の成果と考えれば、受験は十分に成功したと言える、という結論に。そして、それらの武器を身につけたわが子を、「これからは少し遠くから見守ろう」ということで公立中学への入学を決めたのだそうです。

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