中学受験をして無駄だったことは、ひとつもなかった!

 受験で学んだことがベースになって、中学校では好成績をキープ。また、自分の意見をはっきりと言葉にする訓練もしてきたため、ディベートやプレゼンも得意になり、クラスで活躍する場が増えて、Hくんは生き生きと中学校生活を送ることができたと言います。それはまさに、中学受験をするきっかけを与えてくれた、あの同級生のお兄さんのような姿で、どこにいても、本人次第でそれが叶うのだということを体感したそうです。そして、高校受験では自分が行きたいと思う学校の合格を勝ち取って、現在は将来の夢を叶えるために、法学部を選び大学に通っているそうです。

 中学、高校の受験を通して、Hくんの両親が感じたことは、中学受験では子どもがまだ小学生だから、「両手を引いて親が導いていくもの」と無意識に思っていたかもしれない、ということ。でも、子どもは日々学び、自ら考え、戦う力を磨いていて、すでに親と一心同体ではなかったのだと振り返ります。そして、公立中学への入学を決めたあの日に、本当に必要とされた時だけ片手を差し出すくらいの距離感で成長を見守ろうと決めたからこそ、Hくんは自ら目標設定をして一歩ずつ歩んでいく自立心を身につけられたのだと感じているそうです。

「受験は将来について考える大事な機会であり、自分の人生を塗り替えることのできるチャンス。何回やっても無駄になることはないですよ」というHくん親子の笑顔は、これから中学受験をする親子への力強いエールとなるでしょう。

(取材・文/鶴島よしみ)

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鶴島よしみ
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