記憶力が高い」=「間違えた記憶も強い」

――お母様は、「間違えを認めて成長できる人間になってほしい」という言葉にもあるように、怒るのではなく受け入れてほしいと思っているようです。

 よく「一度や二度の失敗でめげるな」という大人がいますが、子どもそれぞれに特性があることを踏まえると、その考え方はちょっと荒っぽい。失敗しても翌日にはけろっとプラスに変えられる子もいれば、心に残って2回目は簡単に近づかないような子もいます。これはモチベーションや勇気の問題ではなく「タイプの違い」なんです。

 立ち直りやすいタイプの子は、勇敢なのではなくて、過去の記憶を忘れやすいから再びチャレンジできるんです。一方で、今回のお子さんは記憶力が高そう。そういうお子さんは、うまくいかなかったときの自分や埋めきれなかった答案用紙の映像が、全部記憶に残っているんです。

 こういうタイプの子は積み上げていく力が強いので、いろいろな経験を積む中でその記憶と理屈に基づいて不安感を乗り越えていきます。しなやかな、芯のある強さを築き上げていくんですね。こういったタイプの子に、6、7歳くらいから「間違いを気にしないで」と促すと傷が残りやすくなってしまうこともありますから、そのあたりを気に留めてほしいなと思います。

間違えた」から「間違いを直せた」記憶に変えてあげる

――では、どのように手助けしてあげるといいでしょうか?

 相談者のお子さんは、うまくやりたいという思いが非常に強い。自分を叩いてしまうあたり、「できたかった」というだけでなく「できている自分をママに見せたかった」という気持ちもあるのではないでしょうか。

 この子の入室テストの回答は、「頭の中で考えはできていたけど確証がないから書かなかった」というところも多いのではないかと思います。ですから、お母様や先生は、お子さんの考えを聞いたうえで「頭の中にはもう十分あるから、こうかなと思ったことを書く練習をしてみようか」と接してみてください。書いてみて違ったら直せばいいし、直せば次はできるようになるよと、間違い直し・覚え直しという技術があることを教えてあげてほしい。そうすれば、この子はそれを技として使えるようになります。

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