「まさか自分がここまでのめりこむとは思いませんでした。親が勝手に設定したゴールに向けて、子どもを引っ張りまわしていた感じです」

 長男が第1志望の私立小に無事合格した数年後、堀井さんの妹も長男と同じ小学校に子どもを入学させた。姉を反面教師にしたのか、幼児教室には通わせず、夏期講習と問題集だけで合格したそうだ。

「私が受験に注いだエネルギーと、幼児教室に支払ったお金はなんだったんでしょうね(笑)」

(撮影/写真映像部・加藤夏子)
(撮影/写真映像部・加藤夏子)

牧場、博物館、工作。受験がくれた笑顔

 当時を振り返り、特に反省しているのは、叱りすぎたことだと堀井さんは話す。

「あせっているから、叱らなくていいことで叱っちゃうんです。『ねえ! なんであそこに鉛筆置いたの?』『なんで鼻歌うたうの?』って。鉛筆なんてどこに置いてもいいし、鼻歌だって楽しいからうたう。息子は叱られる意味がわからなかったでしょうね」

 それでも受験準備の日々の中には、キラキラした記憶も数多く残っている。 

「体験を増やすことが受験の役に立つと聞いて、早起きして親子で散歩したり、週末に牧場や博物館に行ったりしました。長女は当時小学生だったのでよく覚えていて、『楽しかった』って言いますね」

 親子でさまざまな工作をしたことも素敵な記憶だ。

「一時期、紙吹雪作りが超ブームだったんです。大量に作って『おめでとー!』ってテーブルの上から部屋中にまくの。めちゃくちゃ楽しいんですけど、掃除がね、地獄」

 笑いながら懐かしい日々を語る堀井さん。受験対策だとしても、その笑顔は一生の宝物だ。

小学校受験から15年たったいまわかること

「長女の幼児期は、自転車で保育園までガーッと送り届けて、そこから職場に突っ走る日々でした。受験がなかったらあんな時間は作れなかったかもしれません」

 私立小の丁寧な学習指導は長男に学ぶ楽しさを教えてくれ、小学校時代の仲間とはいまも親友だ。ただし、「残念ながら彼は、いまだに“どうでもいいじゃん精神”で生きている」そうだ。

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