かなわないのなら、次のステージで頑張ればいい
――好きなことに全力で向き合うなか、中学受験を決めたのはなぜだったのでしょうか。
生き物が好きで、理科が好き。だから、理科室の大きな学校に行きたい。そんな理由から、ある公立の中高一貫校に行きたい、と思うようになったようです。小学6年生から僕の塾に通い始めました。10年ほど前のことですが、当時は公立の中高一貫校の対策もしていたこともあり、作文の添削を含め指導をしました。それまでまったく勉強をしていなかったため、400字詰めの原稿用紙に縦書きで書き始めるも、途中から“横書き”で書き続けるような、とにかく大胆でハチャメチャな子でした。
希望していた中高一貫校中学への進学は叶いませんでしたが、地元の中学に入ってから成績が飛躍的に伸び、高校は都立の上位校に進学しました。
――親御さんは、中学受験についてどんなお考えだったのですか。
親御さんの姿勢で、僕がすごいなと感じているのは、子どもが決めた道を信じ、貫いている点です。中学受験を選んだのも、子どもが「こうした理由から受験をしたい」と決めたから。不合格だったときのことを考え、私立中学を併願することもありませんでした。無我夢中になるほど好きなことがあり、それをかなえられる環境はどこにあるのか。その選択肢として中学受験があるのなら、挑んでみよう。もし今かなわないのなら、次のステージで頑張ればいい。そんな考えが親御さんにあったのだと思います。
「第1志望校であり、唯一の志望校」
――そうした兄を見て、弟はどのような道を選択したのですか。
前提として、ご両親は兄弟それぞれの性質を把握したうえで、「兄は兄、弟は弟」として接していました。
弟の方は「中高一貫に行きたい」と、塾に通い始めました。体も大きく、エネルギーにあふれた児童だったことから、思いきり走り回れる環境が合うのではないかと思い、東京郊外にある共学校へ見学に行ってみることを提案しました。僕自身、中学からラグビーをやっていたこともあり、広いグラウンドで走り回る彼の姿が想像できたんです。見学に行くと、その学校は彼にとっても親御さんにとっても「第1志望校であり、唯一の志望校」となりました。ほかの学校はいっさい受験しませんでした。1次試験では不合格でしたが、倍率が高くなる2次試験で合格を手にしました。
中学に入学してからは実際にラグビー部に入部し、すっかりハマって。高校3年生のときには、都大会の決勝にも進んだ。大学を含め、ラグビー一筋の人生を歩んでいます。
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