2023年10月に、パレスチナ自治区のイスラム勢力と、イスラエル軍との間で激しい戦闘が始まりました。今回に限らず、イスラエルとパレスチナは、これまでの歴史の中で何度も戦争を繰り返しています。二つの勢力はなぜ戦うのでしょうか? 小中学生向けニュース誌「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)1月号から、ジャーナリストの一色清さんが詳しく解説します。

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奇襲を受けたイスラエルが反撃し、難民キャンプも爆撃

 イスラエル軍と、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとが激しく軍事衝突した。

 直接のきっかけは、2023年10月7日、ハマスが突然、イスラエルをロケット弾で攻撃したことだ。同時にハマスの戦闘員がイスラエル領内に入り、イスラエル住民らを殺害したり人質として拉致したりした。

 すぐさま反撃に移ったイスラエル軍は、ガザ地区を空爆と地上軍の侵攻で破壊した。攻撃はハマスをせん滅するまで続けるとし、病院や難民キャンプまで爆撃する激しさだった。国際社会からは、イスラエルの攻撃を、国際人道法に違反する過剰防衛とする声が多く出た。

 イスラエルとパレスチナの衝突の原因を理解するには、長い歴史を知る必要がある。
 約2千年前、イスラエルの地にはユダヤ教を信じるユダヤ人が住んでいた。しかし、ユダヤ人はこの地を支配したローマ帝国に追い払われ、世界各地に散らばることになった。

 ユダヤ人は国を持たない民族として各地で差別や迫害を受けることがあった。そのため、19世紀末にはユダヤ人の国をつくろうというシオニズム運動が始まった。候補地になったのが、かつて住んでいた場所だった。しかし、そこには長く、パレスチナ人(アラブ人)が住んでいた。

 問題を複雑にしたのは、イギリスによる「三枚舌外交」と呼ばれるものだ。イギリスは第1次世界大戦を有利に進めようと、アラブ人には「独立」を、ユダヤ人には「国家建設」を、ロシアとフランスには「中東の分割」を約束した。ユダヤ人はこの約束をもとに移住を始めた。

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一色清
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